【旅行記】諏訪のサンジュリアン邸を訪ねて <09>:5月20日 (土)「ダンス」

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あらすじ〜日本酒ブログの筆者であるオレ (moukan1972♂) と妻 (moukan1973♀) の二人で、当ブログの名物読者であり、筋金入りのワインコレクターでもあるサンジュリアンさんの御宅を旅行がてら訪問した際の、心のアレコレと現実のモロモロを、特に旅行好きでもないオレがそこそこ本気を出して書き綴った旅行エッセイ。



 雲、どこすか?
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 ▲「白駒の池 (白駒池・しらこまいけ) 」の入り口付近の駐車場。標高2115mのところにあり、「日本で一番最初に凍る池」だと地理ジュリアンさんが説明してくれた。




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EP-09:5月20日 (土)「ダンス」

▪︎道中、彼女は何度もそう言った。








 我々四人が一緒に歩いている姿を見て、さすがに誰も「親子」だとは思わないだろう。そうかと言って「友人同士」にしては歳が離れすぎている。「職場の上司と部下」にしては一番偉そうな隊長然としたデカい紳士が、なぜか生意気そうな少し風変わりな中年に敬語を使っている。やはり「趣味つながり」と考えるのがもっとも自然ではあるが、たとえばここはアイドルのコンサート会場ではないのだから、他人にとって、我々が酒という趣味で繋がってることは簡単には想像できないのである。

 サンジュリアンさんは年に何度か仲間 (かつての職場の部下や同僚) を自宅に招いてバーベキューを開催してワインや日本酒を振る舞うらしいが、そういう話をするとき、彼は決まっていつも「──若い奴ら、と言ってもみんな五十くらいですけど」と言った。おそらく彼にとってもオレにとっても、お互いに最も年齢差 (17歳) のある知人 (友人?) なのだろう。「モーカンさんとは一緒に仕事はできないですね。お互い似てる部分があるので絶対にブツかる。でも今はなんの利害もない関係ですから」──どこかの山道を得意の飛ばし屋ハンドルを華麗に──時折すこぶる大味に操りながら、キングは言った。

 10時と言って10時に来る人ではないと思ったら案の定9時45分過ぎに現れたサンジュリアンさんの車を出迎えにホテルの外に出ると、助手席に奥様が座っていた。「おはようございます! 昨日はお世話になりました!」と言うと、あくびをしながら挨拶を返して「・・・眠いわ」と言った。こういうとき、オレは「昨晩は申し訳ありませんでした」とは言わない。どうせ「お気になさらずに」と言うに決まってるからだ。お姫様、眠いのなら、どうぞ我々にお構いなく助手席でイイ夢を──。

 一方、運転席の隊長を見ると、我々以上の年齢の起きたばかりの朝にはありがちな、どことなく乾燥気味の肌の質感も見受けられたが、二日酔いは大丈夫ですか?と訊くと「全然大丈夫です」とサプリ大王は言った。「オレ、調べるの好きだから」──これが大王の口癖である。

◎サプジュリアンさんオススメの肝臓サプリ
https://oskd.biz/detail/015597_larginine_lornithine.html


「そうだそうだ、モーカンさん、これですよ」──昨晩、サプジュリアンさんがニヤニヤしながらこのサプリを1錠ずつ我々に飲ませてくれたタイミングがどこだったのか、もうそれを思い出すことはできないが、今のオレの身体の具合を冷静に見つめるなら、それは少し飲みすぎた朝に限ってなぜか空腹を感じて「なんだ、別に食欲あるじゃんか」と言って調子に乗って寝起きに食べ過ぎて少し気持ち悪くなり「やっぱ胃腸が疲れてるじゃん」と反省する時の、清々しさとはかけ離れた少し複雑な状態であり、きっと酒飲みならば、この感覚を正確に理解してくれるだろう。飲みすぎた朝の、あのフェイクな空腹感、あれは一体なんだ!?






 本日のドライブコース<前編>
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 ▲旅行から戻った翌日にマメジュリアン氏からメールで届いた画像。「モーカンさん 毎度です。きっと何処行ったか曖昧だと思うので地図で説明します。土曜日、ホテル→白駒池→八千穂。ホテルは富士見高原スキー場、白駒池は中山の上の水色の池、黒澤は右上の佐久穂町八千穂庁舎辺り」



 この日のドライブ・コースはスケジューリアン氏が事前にしっかり決めていたので、言葉は悪いが、我々は拉致されて連れまわされて目的地に着いたら降ろされての繰り返しである──というのも、もともと夫婦そろって地理に疎いくせにスマホもないので、周囲が林だらけの、まるで巨大な巻きグソがネジれるがままに天に昇って行くそれらの景色を見ていても、今自分たちがどこを走っていてどこに向かっているのか、まるでわからないのである。窓から見える景色はいちいち美しいが、全く代わり映えしないので、ますます自分が今どこにいるのかがわからなくなる。

 どうやら今は随分と高いところにいるようだが、合間合間で山ジュリアンさんが「今、◯◯◯◯メートルです」「今、△△△△メートルです」「もうすぐあの山が目の間に見えてきます」「今、□□□の上です」とガイドしてくれるものの、オレにとって目的地までの道のりは、なぜか景色の美しい、全く暗くない、どこまでも広々とした世界一長いトンネルでしかなかった。

 目的地まで1時間半くらいかかることは事前に知っていたが、基本的に信号も渋滞もない舗装された山道をノンストップで走りつづけての1時間半なのだから、距離で言えば東京の自宅マンションからどこまで行ってしまうのだろうと考えた。

 あまり旅行が好きではないオレではあるが、それでもmoukan1973♀とは長い付き合いなので、それなりには行ったことはある。ただし、車の運転をしない我々にとっては、その時点で行く場所が限られるので、白駒池などは何かのバスツアーにでも申し込まない限り、よく考えれば一生来ることもなかった場所だと言えるのだ。



バスツアー白駒池1



 拉致? こんな素敵な拉致ならそれも一興。旅行前は勝手に「二夜連続でワイン飲みまくりだぜベイベー」などと思っていたが、せっかく高原エリアに来たのだから、こういう機会は大切にするべきなんじゃないか。そう思ったら、美しくも長い単調なこの壮大なトンネルも、決して悪くないと思えた。

 車内には熟年夫婦と中年夫婦の四人がいた。お互い家族の話などをして時間を過ごした。父ジュリアンさんには三人の子供 (女・女・男) と二人の孫がいて、長女の息子は本と図書館が大好きな少しませたインドア派 (GWに飯盛山を登った) で、次女の息子は母親にてピースな癒しキャラであるらしい。息子さんの結婚もどうやら間近のようだ。「次は絶対に女の子がいいねえ」と爺ジュリアンさんがデレる一幕もあった。

 何かの拍子に話の内容が黒ずみ、毒が盛られることもあったが、そういうとき、奥様は決して「やめなさい」とは言わずに、むしろ「そうそうそう!」と話に乗っかってきた。うちもそうだが、ここの夫婦もそれなりに「闇つながり」としての「絆」を共有しているようだ。そして、赤の他人に自分の家族のことを平気で話せるくらいなのだから、なんだかんだで仲の良い集団なのだろう。



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 さて、目的地に着いた。途中、車は踊るように左右に大きく揺られながらも──チンタラ運転してる前方の車をレーサージュリアン氏が少し強引に抜き去ったり、逆に危ない運転をするバイクや車に強引に追い抜かれてサンジュリアン夫妻が黒い団結を見せたりしたが、それらに隠れて密かに一番軽やかに踊っていたのは、おそらくmoukan1973♀の心の方ではあっただろう。「こんなところ、車がないと絶対に来られないです。ありがとうございます!」──道中、彼女は何度もそう言った。


moukan1972♂



つづく



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※更新スケジュールは未定ですが、記憶の永続性には限りがありますので、少しずつでも毎日UPする予定です。


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