【旅行記】諏訪のサンジュリアン邸を訪ねて <05>:5月19日 (金)「宴のはじまり」 



あらすじ〜日本酒ブログの筆者であるオレ (moukan1972♂) と妻 (moukan1973♀) の二人で、当ブログの名物読者であり、筋金入りのワインコレクターでもあるサンジュリアンさんの御宅を旅行がてら訪問した際の、心のアレコレと現実のモロモロを、特に旅行好きでもないオレがそこそこ本気を出して書き綴った旅行エッセイ。



 そして宴がはじまった。
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 ▲奥様は宴後にオレたちをホテルまで送ってくれるということで酒は飲まず、コーヒーで乾杯。




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EP-05:5月19日 (金)「宴のはじまり」

▪︎我々は酒だけを飲んでいたわけではない。





 ジ〜ンという、ある種の感の極まりを表現するメジャーな擬態語は、平沢峠や飯盛山から見渡せた息を飲むような絶景に対してではなく、ワイルドな足場がオレの膝にもたらした、今にも目に見えそうな赤い痛みの発光に対して向けられていたが、そんなことを気にする者はオレ以外に誰もおらず、車がサンジュリアン邸に戻ったのは、計画の神スケジューリアンが予定していた通り、まさに夕方の4時くらいであった。

思考1 ちょうど奥様も仕事から戻ってきて、さて、このあとどうなるのだろうと思う間もなくリヴィングに通され、余計な一言でこれまでに何度もトラブルを起こしてきたオレが──中学校の入学初日に隣の担任の女体育教師にホウキで頭を思いっきり叩かれたとか──、加えて長年の思考体験により言語中枢の隅々にまで染み付いてしまった「副詞句:〜のわりには」を、無意識の吐息のように極々自然と皆のいるリヴィングに放出してしまったとき、横のmoukan1973♀が「ちょっと!」と小声で突っ込んでくれたので、それで我に返った。

 モーカンさん、うちの家内の前で絶対に言ってはいけない言葉があります──こんなに買ってどうするんですか?──これだけは絶対に言ってはいけない・・・


セラーが〝あんなわりには〟部屋の中はすごく片付いてるんですね。」── by moukan1972♂ (8月で45歳、一度死ぬか?)


 実際、外観も内装も築30年以上とは思えないほどモダンな造りで──当時はそんな概念は一般的ではなかったとはいえ、廊下からLDKに進む途上に現れるアンチ・バリアフリーな段差が逆に新鮮で──、部屋の中は物が少なく、とてもキレイだった。以前サンジュリアンさんが「僕は隙間があると埋めたくなるんですよ」と言っていたことを思えば、まさにセラー内とは対極、サンジュリアン邸のリヴィングは隙間だらけで物を置きまくることのできるスペースがあちこちにあった。






 キッチン・テーブルの上には大小様々な形のグラスが3脚ずつ用意されており、そこには酒DJソムジュリアン氏なりの〝流れ〟があることは明白だった。一つだけ金魚が飼えるくらいデカいグラスがあったが、おそらくこれで赤を飲むのだろう。今日はホストということで──仲間内や家族と庭でやるBBQの時は酒と場所だけ提供してすべての準備は家来どもに任せるらしいが──、サンジュリアンさんは4月に我が家に来たときとは異なり、完全なるホームということで、酒を得た疲労人 (水を得た魚) のようにウロチョロと家の中を動き回っていた──どうやら庭を視察していたようである。







 ほんの束の間、キッチンと仕切りなく見渡せるリヴィング (本日の宴会場) で奥様とオレたちの3人だけで話をする時間があったのだが、ほんのりオレが驚いたのは「失礼ですけど、お名前は・・・?」と彼女が訊いたときだった。どうやらオレと自分の旦那の関係をあまり詳しくは知らないようなので──よくよく考えれば不思議な関係だし、オレたちもすっかり改めて名乗るのを忘れていたし──、それで簡単な経緯などを説明すると「そうだったんですか〜。あのひと暇ですからねえ〜」と言った。そして〝なんかコイツらオレの良からぬ噂話をしてやがんな〟という素晴らしいタイミングでキングがシャンを持って戻ってきた。どうやら庭で飲むには少し何かの環境が足りなかったようである──気温なのか風なのか天気なのか、それはオレにはわからない。

「薄すぎても濃すぎてもあれなので、まずはこのへんからです」






◤Drappier / ドラピエ キュヴェ・シャルル・ド・ゴール 2006 (写真Clickで関連ShopページにJump!)
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 ▲うちのミニオンとシャンボーイたちも参戦。


 というわけDE、カンパ〜イ!!!

 ▲三幸製菓のサラセンは煎ジュリアンさんが近所のスーパーで100円だったからオレに気を使って買ってきたくれたようだ。ちなみにこれは100円ショップや薬局などでよく売ってる安価なスタンダードクラスの「三幸のサラダせん」で、亀田のようなモッチリした米の旨みはなく、あくまでもスナック様の軽さがウリ。塩っぱいくらい味の濃いロットが当たりで、薄いと感じたらハズレ確定。亀田も不味くはないが、酒のアテや食後のデザートには少し重い。そして、これのハイクラス品が「熟成サラダ」ということになる。




 1973「美味しい〜」←もはや何でも。
 オレ「結構ドライですね」
 KING「モーカンさん、我々 (ワイン呑み) はこれは『甘い』と感じるんですよ」

 1973「・・・甘くはない・・・」
 オレ「よくそれで甘くてフルーティーな日本酒をさんざ飲んでましたね」←決して「へえ〜、そうなんですかあ〜」では終わらない。
 KING「でも、もう飽きちゃった。日本酒は重いんですよ。なんか胃の中に鉛がズーンとある感じ。結局日本酒って浪花節の世界ですよ。男が黙って酒と真剣に向き合うというか。ワインはもっと華やかでしょ」
 1973「わかるぅ〜」←オイっ。




 2006ヴィンテージなので、すでに10年以上も寝てるわけだが、日本酒とは異なり、このくらいでどうにかなるものでもない。むしろシャンパーニュの場合、スタンダードクラスのNV (ノン・ヴィンテージ=単一収穫年のブドウではなく様々なヴィンテージのブドウで作ったワインをアッサンブラージュして造ったモノ) の方が逆に「秘伝のタレ」と言われる長期熟成させた「リザーヴ・ワイン」をスパイスとして混ぜるので、フレッシュな果実味の奥に、下手なヴィンテージ (ラベルに収穫年が印字されたモノ) よりも表情豊かな熟香や熟味を、ワンポイントの古着コーディネートのように兼ね備えていることもある──ことが最近わかってきた。

 なので、このドラピエも、ヴィンテージ特有の落ち着きは感じられるものの、今となっては別に飛び上がるほど旨いわけでもないし、むしろこれよりも安いNVの方が「フレッシュな果実味+熟成ライクな纏い」がドラマティックに内在し合ってたりするので、アタリを引けば、たとえ値段が安いからといって、まるで勝ち目がないというわけでもない。たとえばこれなら「Chinchilla / シャンシーラ ブラン・ド・ブラン グラン・クリュNV」の方が、ある意味では表情豊かな味物語を舌に届けてくれる楽しさ、人懐こさはある。


 とまあ、真剣に酒の話をすると余りにも殺伐とするので、そういうのはここではやめておきます。






◤Clos Floridene / クロ・フロリデーヌ・ブラン 2004 (写真Clickで関連ShopページにJump!)
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 ▲キングは片手でドバドバ注ぐので、結構、こぼします。



 シャンを飲み干したわけでもないのに、せっかちなソムリエ、セカジュリエ氏は早くも次なる1本 (白ワイン) を持ってきた。さっそくキングが毒味。「あああ、これは完全にピークを過ぎてるなあ。つい2週間くらい前にこれの2005を飲んだときは旨かったけど」──。

 そもそも白ワインなんて──別に赤もそうだけど──、安物を冷やして飲むくらいしか経験がないので、これはなかなか面白い風味で楽しめはした。果実的な酸が抜け落ちて、香りも硫黄温泉や卵の黄身、酸は醤油のそれに近く、含むとチョークなミネラルの砂塵が舞うが、日本酒のそれよりは軽やかでサラサラと消えてゆく。






◤Algareiro / アルガレイロ アルバリーニョ・リアス・バイシャス 2011 (写真Clickで関連ShopページにJump!)
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「クロ・フロリデーヌ・ブラン 2004」がキング的にもう一つだったようで、まだまだ残ってるのに持ってきたのがスペイン産の安旨な白ワイン。「これ気に入ったんでもっと欲しかったんですけど、もう売ってません」──。

「これ好きー」とmoukan1973♀が言う。ソーヴィニヨン・ブランのような香りだが、キングは「確かに似てるけど、ソーヴィニヨン・ブランの方がもっと青臭いでしょ」と説明してくれた。今値段を見てこんなに安いのかと驚いたが、これこそワンランク上のデイリーユースに最高の1本。昔よく近所のスーパーで買って飲んでいた「ドメーヌ アランブリュモン ガスコーニュ・ブラン」を想起させる風味だが、アルガレイロの方がスリムで芯のある酸で果実味に凝縮感あって濃い。まるで黄色寄りの黄緑色の絵の具を口に入れたように明るトーンのワインだ。



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 ▲徐々にメチャクチャ飲みの様相を呈してきたが、完全ホームのキングの勢いはますます旺盛に──と言っても彼はそこまで酒が強くはないので、旺盛なのは「飲ませタガリアン」としてのそれである。



 まだ飲み始めてから1時間も経ってないんじゃないかと思うわけだが、当初は「3-4時頃に拙宅に来て貰いシャンでも飲んで適当に過ごした後に夕食・ワイン会にしようかと考えてます」と言っていたはずなのに、もうワインが2本も開けられている今は、登山で言うと一体何合目あたりなのだろうか。

 この間、我々は酒だけをひらすら飲んでいたわけではない。サンジュリアン夫人はキングの指令でツマミを用意しにキッチンに向かう以外はずっと同じ輪の中にいたし、どちらかと言えば、3人の子供が全員独立した熟年夫婦が子供のいない中年夫婦を自宅に招いて酒と食事を振る舞い大人4人で楽しく談笑している雰囲気こそがこの場の空気の主要成分であって、酒はあくまでも脇役──我々4人の友好という名の川を弛みなくたおやかに流れる美しい水に過ぎなかった。ただしこの水は、飲むと非常によく酔う。

 酒の量と時計の針との愉快なアンバランスがスケジュールの壁を朗らかに打ち破り始めたのを感じたオレが「このままシームレスに適当に夕食に雪崩れ込めばいいんじゃないですか?」と言うと、サンジュリアン夫人も頷き、moukan1973♀はいつものノリで「もう適当でいいですよ〜」と言い、計画神スケジューリアンであるキングもようやく落ち着いて酒を飲みはじめたように思う。

 それからテレビも音楽もOFFの、静かだが賑やかな時を幾ばくか過ごした後、遂にキングは赤を開け、「ビストロ・サン」のシェフジュリアンが前日から仕込んだという、ボルドーワインを丸々1本使ったビーフ・シチューを夫人が持ってきてくれた。


moukan1972♂



つづく



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※更新スケジュールは未定ですが、記憶の永続性には限りがありますので、少しずつでも毎日UPする予定です。


Comment

Name - moukan1972♂  

Title - To サンジュリアンさん



毎度です。


──最近NVで五年放ったらかしにしてたのを開けたらメッチャ良くなってました。当時直ぐ飲んで余りにも荒々しいで失敗だと後悔したんですけど今は正解だったと思ってます。

5年後の自分なんてまるで想像もつきませんよ (笑) 。サンジュリアンさんはあそこに家を建てた時からワインコレクターになることが運命付けられてたんですよ。暑い東京じゃ専用の地下室でも作らない限り、まともな管理なんかできないですよ。

フィッチにチボーのブリュットが再入荷したので──僕がリクエストして輸入元から取り寄せさせたので──、ナタリー・ファルメと味クラーヴェできそうです。日本酒と違い、数ヶ月や1年そこらでコンディションに差が出ないところは非常に助かります。

2017.05.30 Tue 21:54
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Name - サンジュリアン  

Title - 了解です。

毎度です。
例の件 いつでも良いので連絡待ちます。

そう言えば、グラス🥂だけ使って飲まなかったベルエポックの2008 ウキウキで出てましたよ。ちょい高いから買いませんが、、

最近NVで五年放ったらかしにしてたのを開けたらメッチャ良くなってました。確かコレ、グラス欲しさで買ったやつですが、当時直ぐ飲んで余りにも荒々しいで失敗だと後悔したんですけど今は正解だったと思ってます。時は無駄ではなかった という事でしょうね〜〜
http://item.rakuten.co.jp/veritas/vaph05z0/
2017.05.30 Tue 16:53
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Name - moukan1972♂  

Title - To kappa1970♂さん、山ジュリアンさん



kappa1970♂さん


毎度です。


──旅行エッセイシリーズ好きですね。臨場感がたまらんです。

たまにはマトモ──なのか!?──な文章も書けるんだぜというところを見せておかないとです。昔オークションやってた頃は今の10倍くらいふざけてたので、僕のことを本当に (お勉強ができないという意味での) バカだと思ってたヤツが多かったんですよ。さすがに今はそこを勘違いするバカはいないと思いますが (笑) 。


──moukanさん滝汗じゃないですka。パンドーラーの甕を開ける寸前で留まった感。

とりあえず目だけ逸らして3秒くらい聴覚で様子を見てましたが大丈夫だったようです。ある意味、奥様の主婦としての力量を褒めたとも言えるわけでして (笑) 。


──こうなると、「えっ、そこ?」的な意外な細かさの出現を期待せざるを得ません。

↓このお方、よくわからないんですよ (笑) 。



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山ジュリアンさん


毎度です。

旅行から戻ったら東京も雨や曇り続きで蒸して来ました。今日は夏日で暑いです。マジで〝これ以上ないタイミング〟でお邪魔させていただきました。特に2日目の晴天は素晴らしかったですね。


──先日の飯盛山の7掛けコースで物足りない感じ、 丁度モーカンさん向きかな? ガキどもは何故か登らないで湿原のベンチで弁当食っていました。 若い内に鍛えないとモーカンさんみたいなおじさんになるぞ〜!

実は体重がBestより1〜1.5kgほど多かったのと、最近バタバタして全然チャリで酒屋周りをしてなかったツケが一気に来ましたね。あれからずっとダイエット中で、Best体重まであと少しのところまで戻しました。

次に行く時は万全のコンディションで参戦するのと、もう見栄を張って元気ジジイの速歩レベルには無理に合わせません (笑) 。わざと遅れを取って山ジュリアンさんを待たせる作戦に出ます。


──モーカンさん シャンの好みは若いフレッシュなのが好きなんだ〜〜 私は熟成して蜂蜜林檎ぽいのが好き、その意味ではドラピエはまあまあ75点でしたね

違う違うっ、そうじゃ、そうじゃなくて、下手なヴィンテージなら、古着のワンポイント・コーディネートのようなNV的アッサンブラージュの方が味わい豊かなケースもあるということです。一体感や統一感はヴィンテージや単一畑モノの方があるでしょうが、NVにはNV的な世界観があって、それはそれで捨てたもんじゃないと思い始めてるということです。

料理で言えば「お得な格安コース」みたいなもんです。それに、最終的には旨いモノだけが旨いので、ジャンルは関係ないですね。

仙介の28BYは未だエントリーできてないですね。特純の1800mlはそのうち僕が7掛けで引き取りますかね。たしかまだ2本あるはずですよね (笑) 。

例のGOサインはもう少し待って下さい。

2017.05.30 Tue 16:27
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Name - サンジュリアン  

Title - 今日は鷲ヶ峰1798mハイキング

毎度です。
今日は梅雨前最後のタイミングで、先日飯盛山に行ったおじさんメンバーと八島から鷲ヶ峰にハイキングして来ました。家から途中おじさん仲間拾って45分で霧ヶ峰経由で八島湿原駐車場到着

八島湿原駐車場は霧ヶ峰から車で5分、更に和田峠越えて24km走れば美ヶ原です。
登山口からゆっくり登って45分 先日の飯盛山の7掛けコースで物足りない感じ、
丁度モーカンさん向きかな? 麓の八島湿原では多分東京から来た中坊達が写生してました。でも鷲ヶ峰に登っていたのは元気な中高年ばかり、ガキどもは何故か登らないで湿原のベンチで弁当食っていました。
若い内に鍛えないとモーカンさんみたいなおじさんになるぞ〜!

鷲ヶ峰 http://www.naganoken.jp/mount/suwa/kirigamine/washigamine.htm

モーカンさん シャンの好みは若いフレッシュなのが好きなんだ〜〜
私は熟成して蜂蜜林檎ぽいのが好き、その意味ではドラピエはまあまあ75点でしたね。

さて昨夜は先日のBBQでみんなが飲み残した たかちよ赤と仙介純米吟醸ムロゲンを飲みましたが、たかちよは甘くべったり、仙介は3合/720ml残りだけど開けたらプシューで味は開けたての荒さが消えてずっと旨かったです。
2017.05.30 Tue 15:10
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Name - kappa1970♂  

Title - 定点観測 今日のヘンゲ

moukanさん

毎度です。旅行エッセイシリーズ好きですね。臨場感がたまらんです。


冒頭から爆笑。

セラーが〝あんなわりには〟部屋の中はすごく片付いてるんですね。」── by moukan1972♂ (8月で45歳、一度死ぬか?)

moukanさん滝汗じゃないですka。パンドーラーの甕を開ける寸前で留まった感。



■定点観測、今日の"サンジュリアン"さん■
・計画の神スケジューリアン
・酒DJソムジュリアン氏
・酒を得た疲労人 (水を得た魚)
・煎ジュリアンさん
・せっかちなソムリエ、セカジュリエ氏
・飲ませタガリアン
・「ビストロ・サン」のシェフジュリアン

七変化 達成!

▲キングは片手でドバドバ注ぐので、結構、こぼします。

→ブレないキングっぷりですね。
こうなると、「えっ、そこ?」的な意外な細かさの出現を期待せざるを得ません。

続編、楽しみです。パンドーラーの甕 開けちゃったのでは。(笑)

kappa1970♂
2017.05.30 Tue 12:38
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