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◤仙禽 - 秋あがり 赤とんぼ 生酛 亀ノ尾 1年熟成 26BY ── dಠಠb「変な話、ほとんどの酒は、この酒を前にすれば少なからず霞むと思うよ」
さーて、マチダヤ試飲会の秋酒大本命を──もう冬だけど (笑) ──今宵開栓です。今年の「赤とんぼ」には「ひやおろし 雄町」と「秋あがり 亀ノ尾」の2種類があって、もちろん両方とも試飲したけど、本命は断然こっちだと思った──端的に言って作品としてのモノが違うと思った。
まずは毎度お馴染み、蔵元である薄井一樹氏による渾身のコメントをどうぞ──なんだかんだ言って、この少しガタガタした文章も嫌いじゃない (笑) 。推敲したい気持ちをグっと抑えて、原文のまま掲載します。
いよいよ秋の到来です。仙禽の『秋あがり』の解禁です。
今年から発売している『ナチュール』シリーズですが、このナチュールの醸造は実は昨年まで遡ります。つまり、26BYからナチュールはテスト醸造されていました。この初めて仕込んだナチュールを、一年間熟成したものが今回の『仙禽 秋あがり 赤とんぼ』となります。
当蔵としても初めての試みであったため、木桶一本分だけ醸造しました。したがいまして数量に限りがございますのでご注意くださいませ。
味わいは、今年のナチュールよりも豊満でグラマラス。体に染み渡るような『生命力』の強さを感じます。
空気の匂いが変化し、心身秋を感じるようになりました。ようやくひやおろしが美味しい時がやってきました。
巷では『食中酒』や『マリアージュ』ということばを耳にします。本当の意味の『食中酒』や『マリアージュ』とは何でしょうか。本当の酒と料理の相性とは季節を無視する事はできません。秋の円熟した食材にはひと夏を越した円熟した酒があうにきまっています。夏の食材に、中途半端に熟成したひやおろしを合わせる事は悲しい事です。
夏を越え、急速な温度の低下により熟成も山を越えて落ち着くわけですから、受け入れる側の人間の感性と酒の熟成の終焉が見事に重なり合うタイミングです。厳寒の、天然酵母生もとは見事に芳醇さを増し、昨年を大きく上回る仕上がりになりました。

▲試飲会でのやり取りは写真をクリック!

今回の亀ノ尾は、薄井専務曰く──「言うなら、これがナチュールZEROです」という、いわば26BYに仕込んだプロトタイプの1年熟成ということになる。実は「亀ノ尾」という米は 酒造好適米ではなく、酒造適正米。仙禽のこだわりもまさにここにあって、裏のラベルに書かれている「超古代製法」という言葉には、醸造手法だけでなく、「酒造好適米を使わない酒」という意味も含まれる。とはいえここには、精米機も協会酵母 (分離酵母) もなかった時代の先人たちと全く同じ条件や手法に準じつつも、唯一その仕上がりにおいてのみ仙禽オリエンテッドなモダニティを体現するという、彼ら流のキザ──「ダンディズム」と言ってもいいだろう──を浮き彫りにするための回りくどいレトリックが隠されていることは意識しておいていいだろう。
要するに──「オレたち、超昔の人と同じ方法で酒を造ったけど、出来上がった酒は超オシャレじゃね?」──的な矜持をより際立たせるための「超古代製法」なのではないかと邪推するのは、オレの性格の悪さゆえだろうが、こういうキザな自己主張をする人間を、オレは決して嫌いじゃない。ただ少しだけ──なんというか、イジりたくなってしまうだけだ。新政の佐藤祐輔と違って、薄井一樹には同じ生意気さの中にもファニーな綻びがあるからな (笑) 。
試飲会の時は素直に「うめえ!」と思ったのだけれど、あらためて家で呑むと、さてどうだろう。あのままの印象なら☆5はあるはずだが・・・。
ちなみに、滅多に公表されない「仙禽」の数値だけど、試飲会の資料には「日本酒度:−18、酸度:3.0」と書いてある。

▲「ひやおろし」と「秋あがり」が逆になってるけど、薄井の兄ちゃんも間違えて説明してた (笑) 。

▲BSフジ『酒旅』より。
▼仙禽自慢の木桶。

bottle size:1800ml
SAKE GRADE:☆☆☆☆☆☆☆
【238】仙禽 -せんきん- 秋あがり 赤とんぼ 生酛 亀ノ尾 1年熟成 26BY <栃木>
(株) せんきん (by 地酒専門店 佐野屋) :http://www.jizake.com
Moukan's tag:

▲さすがに色は付いてます。写真よりも黄色いです。
日曜の夜だし、すでに気分的にはHTモード突入 (へいてんもーどとつにゅう) してるので、先に結論を言っておくわ。「7月13日」以来の☆6です。わりと人気で品薄なので、売れ残ってる店も少ないかもれないけど、これはいろいろと人の意識を拡張してくれる酒です。決して万人ウケする味わいじゃないけど、まあ、イマドキの日本酒を真面目に追い掛けておきながらこれを知らないでやり過すのは少し淋しいという話になるかもしれない。もちろん、オレだってこういう価値ある酒との未遭遇ばかりで切なくなるけど、一応、情報発信者として──体験者として、せめてこの酒だけは大いに薦めておきたい。ま、マチダヤ試飲会の時 (発売前) から言ってたよね、オレ。そういうことです。すでに先回りして呑んでくれた人はおめでとうございます。
以下、時間軸は、飲み始めの節 (まだ口に含んでいない時制) に戻ります。
立ち香──おっ、スモーキー。なんか試飲会の時とだいぶ印象が異なるのが怖い気もするが、気にせず参りましょう。熟成由来の、少しいなたいタッチの米感も奥でしっかりある。フルーツというか、どちらかと言うと、リンゴ酢のような香りも。甘やかさ、クリーミイさ、華やかさなどは全くない。ドライフルーツ様の渋みというよりは、少し焦げたような──つまりは「スモーキー」なニュアンス。チョコ (カカオ) もない。ただし、一定の複雑さはある。
含みます──。
一口目は窮屈に酸っぱいけど、すぐに味は開いて、次第にチェリー様の甘酸が立ち込めて、キューンとしたタイトな酸にまとわりつく複雑模様の五味から甘みが一歩抜け出して、熟成ライクな苦みの滑走路を、やや長めの余韻を従えて、そのまましなやかにスゥーと駆け抜けます。まるであんず棒のような余韻 (笑) 。

▲たまたま先日、近所のスーパーで買っていた。
はい、旨いー。
RSフィールド (れいしゅふぃーるど) から離れて行く道程の中でBestの温度帯に出会う酒です。完全なRSだと酸っぱいだけで、この酒の魅力は閉じこもったままでしょう。温度が上がってくるとグングン味が開いて、もはや酒単体で食べ物のようにグイグイ呑んでしまう。旨みの厚みはどうだろう。仙禽だし、生酒ではないので、そこまでのドゥワリンコな暴れもなく、感じるのは、むしろ味わいとしてのカラフルさ、複雑さ。
速醸にはない、生酛らしい密度の高い──まるで〝酸っぱみにまみれた布巾〟をギュっと絞ってポタポタ滴り落ちるかの如くの凝縮感のある酸。甘みなどの香りの色彩は、あくまでもこの深み豊かな芯のある酸をコーティングする形で覆いかぶさるという流れだ。そして、熟成によって完全に角の取れた味わいゆえ、アフターにおけるイヤなアルコール感 (ノイズ) が一切ない。キレ上がる力強さはあるものの、それと引き換えに請け負う、あの喉を焼くような刺激 (辛み) は全く感じない。そこは原酒でALC.14度だけはある。
撹拌後、リーデルで──。


▲色はまるで「すりおろしリンゴジュース」のよう。
いい。リーデルがいい。空気に触れて柔らかさ、甘さがグっと引き立つ。不思議と立ち香で感じた〝いなたい米感〟からは離れてきた。ドライフルーツを噛み砕いた時のような旨みもジュワっと溢れ出しつつ、酒のBodyはあくまでも軽やか。
荒々しくも野太い「無濾過的な佇まい」の中にイイ意味でのザラついた雑味もあって──そこに宿るカラフルな苦み、これが何とも深みがあって、より一層〝酒としての作品性〟を高めていると思う。変な話、ほとんどの酒は、この酒を前にすれば少なからず霞むと思うよ。たった1年でこの深み、複雑さ、美しくも力強いストラクチャー。日本酒がJSフィールド (じゅくせいふぃーるど) で唯一ワインに勝てるのは、このタイムマシン的な時間のスっ飛ばしさにおいてなのかもしれない──つまり、たった1年でワイン10年分の熟成を得られるというタイムマシン性。
♡☺♡「美味しいシロップ飲んでるみたい! 最近呑んだ中で一番ウマイ!」
確かに「シロップ」という意味では、「五橋 - 純米生原酒 黒糀96」なんかと同じ方向性を感じなくもないが、やはり仙禽の方が一枚上手であることに異論を挟む余地はない。そして、「五橋」は☆5なのだから、やはりこの「赤とんぼ」は☆6なのだ。
▼moukan1973♀の鎌倉土産。

▲「シナモン香」漂う甘酸っぱいリンゴ味の「鎌倉まめや」の豆菓子にもよく合う。
木桶仕込みだけど、新築の麹室がもたらす、まるで〝樽酒のような木香〟とは異なり──つまり、味わいの芯に絡んでくる香りじゃなく、あくまでも装飾的風味のレベルだから全くノイズにはなってないし、そもそも飲んでいて「木」を感じる瞬間はあまりない。
おお、徐々に「皮ごと煮詰めたリンゴ」のような濃醇な果実味も出てきた。今日は燗につけてる暇が全くなかったので、お燗は明日やります。もしもお燗が爆発的に旨ければ☆7に格上げするかもしれない。これほどまでの濃醇な仙禽は26BYの「山田錦生」以来。仙禽は、クリアで軽やかな酒質ばかりの27BYだったけど、やはり、この26BY的な濃醇さをオレは重ねて推しておきたい。
そして!
せっかくなので、あんず棒を使って、台所ラボで自家製スイーツ作りに励んでみた。

▲駄菓子の「あんず棒」を使用。

▲酒とあんず棒は「1:1」の割合でブレンド。

▲ラップをして冷凍庫へ。あっという間に「仙禽あんずシャーベット」の出来上がり (笑) 。
水曜が祝日なので、そこで食べます。引き続きレポートをお楽しみに〜。
── 2日目。

とりあえず、一杯だけ。
異次元。
甘みが伸びる伸びる。トータルの味わいは確かに「仙禽」なんだけど、それでもやはり、ここには他の「仙禽」では決して出会えない、One&Onlyな存在感がある。ちょっとラム酒みたいな甘苦酸のトライアングルもあるよね。あとはプルーン。まるでプルーンのお酒。なにこれ、ヤバイわ。薄井のヤロウはムカつくけど、もういいよ、すべて許す (笑) 。
ごめん。しばらくは「これが基準」になっちゃう──つまり、他の酒を飲んで、そうそう驚く (感動する) ことはないかもしれない。
「旨い」とかの前に、ただひたすら「スゲえ酒」。27BYリリースの仙禽は、これだけ飲んどけばいいと思うよ。カラフルで口の中の情報量は多めなんだけど、不思議と重くないんだな。まさに大人の嗜み酒だ。ヤバい、もう1本買ってしまいそうだ・・・。仙禽史上「最高」の仕上がり──は言い過ぎか (笑) 。

最後に1杯だけ、レンジ燗、やる?
もうかなり、酒量のキャパ的には満腹なんだけど・・・。

でも、退けにかけての手仕舞いの中で、仙禽らしい、そして生酛らしい高密度の酸が味わいをキュっと力強く搾り切るから、締まりはいい。
ただ、冷静に立ち止まって考えると、オレはもはや「日本酒」について何かを感じたり書いたりしてる気が全くしてない。そう、単にこれは「仙禽という飲み物」について語っているに過ぎないのだ。☆7が付かないのはそこに理油があるのかもしれない。つまりこれ、「日本酒うんぬん」で語れる範囲を超えてるんだよ。だから、ある意味で「判定不能」というかさ。これに☆7を付けたら、日本酒という概念そのものを一度ディコンストラクション (脱構築) しなくちゃならなくなる。
それでも甘ぁぁぁ〜〜〜〜〜〜いっ!
まだ売ってる店もあるので、キレイで華やかで甘くてフルーティーな酒に満足できなくなりつつある人は是非一度お手に取ってみてね。他に似てる酒がないというのはそれだけで素晴らしいことだ。
── 3日目。
世界の大谷が小さな町に現る!

▲ファンの女の子からの「どうすれば大谷くんのお嫁さんになれますか?」という趣旨の質問に対して「明るい人がいいですね」などとモゴモゴしていたところ、司会のババアが話を少しスリ変えて「容姿の好みは?」的な話を振ったら、まさかのこの表情 (笑) 。

▲つまり司会のババアは「好みの芸能人は?」と訊きたかったのだろう。そこで世界の大谷は「 (すべての女性は) まあ、皆キレイですよね」という模範解答。

▲そしてババアの方に視線を向けて、「 (司会者さんも) キレイですよね (笑) 」とブチ上げた。

ババア「も〜う、ヤダあ〜、大谷くんったらあ〜♡」的な立ち上がり。

▲世界の大谷、初対面のババアをいてこます。流石です。ファンになりました。

▲似てきた?
DE、なんの話だったっけ?
そうだ、最高過ぎる仙禽の3日目の話だった──。

つうかマジで、今シーズンにリリースされた「仙禽」の中でこれ以上のモノって存在するの? この「生酛 亀ノ尾」より旨い仙禽を知ってる人、もしもこの中にいたら、是非それを教えてください。買えるなら、即買います。
仙禽の酒質が「甘酸っぱい」というのはよく知られた属性だけど、そうは言いつつ、実際に飲むと、結局は「酸」だけが目立つケースが多いんだよな。要するに、全体としては「酸っぱい」っていう。その点、27BYのいくつかの酒は、逆に「甘」が勝ってる酒が多かったように思う──つまり、なかなか甘酸のバランスは拮抗しない。
DE、これだよ。
これは明確に「甘酸っぱい」よ。特に速醸タイプの仙禽と違って、なんか酸の存在感がイイ意味で「魅惑の無頼漢」なんだよな。荒々しいけど、染み渡る優しさ、優美さがある。
こういう日本酒こそ世界に羽ばたいて欲しいな。世界中のソムリエがひっくり返るぜ、マジで。フランスの野暮天も九平次「別誂」程度でいちいち満足してんじゃねーよ。
ちなみにオレ、実は初日から「あんま味や香りの説明してない」のわかった? これ、単に意地悪してるだけなんだよ。☆6だぜ? 買って飲んだ人だけがわかればいいでしょ (笑) 。

じゃあ、一生「速醸」の酒を飲んでなよ。その代わり、一生「この味わい」に出会うことも、またないから。『酒旅』の中で薄井のヤロウも言ってたけど、生酛造りで蔵付き酵母任せだと、どんな酒になるか、全く計算できないらしいし、毎回同じ酒にならないみたいだよな。じゃあこの酒、つまりはもう二度と飲めないんじゃん。
今日はリーデルより小さめのグイ呑みの方がダイレクトに味が飛び込んで来るから、いいかな。パキっとマッチョな酸の張りを、より強く感じれる。
残り2合弱。4日目はmoukan1973♀とお燗を楽しもう──なんかスゲえ寒いらしいし・・・。そうだ、仙禽スイーツもあるぜよ!
── 4日目。

ヤバイね。
今日も全く味が崩れない。生酛ツええー。
なんでしょう。ま、フルーツ換算だと、完全にプルーンですね。杏もあるけど、もっとダークなカラーだよね。まあ、「つべこべ言わずに飲めよ」という感じです。この「仙禽」を体験せずして「仙禽」を語ってほしくはないですね。
クラシック仙禽 (笑) ?──これは単なる「美しい水」でしょう。もちろん、「美しい水」に価値がないとは言わないけど、まあ、作品としての強度が桁違いですね。言っちゃえば、これ以外の「仙禽」は、所詮「仙禽のノベルティー」ですよ──シールとか、ストラップとか、クリアファイルとか、手拭い (タオル) とか。
薄井のヤロウはムカつくけど (枕) 、この酒は最高です。


お燗も最高!!!
2日目に感じたような甘みは姿を消して、しっかりとくすんだフルーツ感を楽しめる。いいですねえ。えっ? 買い逃した? ザマあ!!!
それでは、仙禽スイーツ、参ります。

▲駄菓子の「あんず棒」と「1:1」でブレンドして凍らせたモノ。
▼どうです、この旨そうなビジュアル。

大人の杏スイーツ ゚+。:.゚(*゚Д゚*)キタコレ゚.:。+゚
かなり甘さは控えめ──つうか、むしろ「苦み」を楽しむスイーツですね。この温度帯だと、酒感は全く感じない。通常の「あんず棒」にダークカラーな苦みをアダルトに加味したニュアンス。いちいち最高ですね。
夫婦で少し話し合ったんですが、☆7に格上げすることにしました。
moukan1972♂
Name - moukan1972♂
Title - 本日開栓
まずは「うわ、これ飲めねえよ!」ということが全くなかったことで一安心。むしろエッジの利いたトンガリ酒としての風貌は消え、全体に丸く甘やかになった印象。今日飲んだ酒の中では人気No.1。まだまだ「この先」も感じさせる圧倒的な存在感とスケール感。
去年の方が甘酸のコントラストはビビッドでフルーティーだったけど、この2年熟成 (実際には3年近く) は随分とシックに仕上がってました。まだ半分あるので、月曜以降の酒ライフの充実しまくりが嬉しくて仕方ない。☆7は維持されたと思う。別格。
紹興酒というよりはブランデー。もう二度とこんな「仙禽」は飲めないと思うと切ない。