◤十六代 九郎右衛門 - 山廃特別純米 雄町 無濾過生原酒 仕込58号 27BY ── dಠಠb「造った本人は『ジューシー雄町 vs 魅惑の酸』、呑んだオレは『フルーティー酒 vs ポスト・フルーティー酒』」#Umakuchi 




 十六代九郎右衛門──はじめて呑みます。地元銘柄には「木曽路」と、地元米のヨネシロで仕込んだ「燦水木 (さんみずき) 」があります。先日まとめ買いした「地酒屋こだまシリーズ」の1本です。当初、愛山55の4合瓶をオーダーしたんだけど、売り切れということなので、迷わず「山廃雄町生」に変更しました。こだまの新着情報によると、つい最近「仕込59号」の同じ酒がリリースされたようだけど、こちらは6月出荷の「仕込58号」です。

 十六代九郎右衛門の湯川慎一杜氏と言えば、以前は「黒松仙醸 こんな夜に」でお馴染みの「株式会社 仙醸」で杜氏をしていたんですが、訳あって「湯川酒造店」に移りました──円満退社だそう。そのへんの詳しい経緯はこちらのブログに書かれてます。

 マイ日本酒探し
 湯川酒造店を応援する会 in きの字


 裏のラベルに書かれた「ジューシー雄町 vs 魅惑の酸」というキャッチコピーは手元に届いてから知ったけど、もしも酒屋でこれを見てたら、間違いなく買ってしまいそうだ (笑) 。 もはや現代の山廃生は、オレにとっては速醸タイプよりライトでカロリーオフな酒という位置付け。今回もスイスイ呑めることを期待してます。




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 よく思考停止気味に語られる「山廃=どっしり、濃醇、重い」というのは、火入れの熟成山廃に対するイメージの一人歩きだと思うよ。別に速醸タイプだって、火入れで1〜2年寝かせたモノを冷酒で呑めば、どんなものでも、ある程度は「どっしり、濃醇、重い」と感じるはずじゃん。つまりさ、「山廃」という属性に対する誤解というか風説というのは、本質的に「直汲み/生酒/一回火入れのフルーティー酒 vs 火入れの熟成山廃」という、そもそも比較すること自体がナンセンスな対立構造から導き出された、全くアテにならない印象論に過ぎないと思うわけだ。

 同じ銘柄の似たようなスペックの速醸生と山廃生を飲み比べてみなよ。オレの場合は山廃生の方が軽いと感じることが多い。ほら、みんなの大好きな新政くん、あれだって全量生酛 (非速醸) なわけじゃん。新政の生酛は、新政だから軽いんじゃなくて、生酛だから──速醸じゃないから軽いって考えたことない? 先日の五十嵐だって幻舞だって、もしも同じスペックの山廃生があったとしたら、酒質が速醸のモノよりさらに濃醇になるというイメージ、全く頭に描けないもの。

 DE、何が言いたいか──「山廃」というだけでその酒を敬遠していると、多くの「美酒との遭遇」の機会を失うことになるんじゃないかということ。たとえば田酒の特純だって、定番の速醸より山廃の方が遥かに滑りがよくてスイスイ呑めるからね──お燗の話ね。

 これで九郎右衛門の山廃が「どっしり、濃醇、重い」と、オレの立場がクワナリ危うくなるわけだが (笑) 、とりあえず呑んでみるね。




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 ALESSI - MAGIC BUNNY

 ▼原宿のビンテージ専門のメガネ屋で3本買ったみたい。左は店のスタッフ。
 



ジューシー雄町 vs 魅惑の酸」──煽るなあ (笑) 。
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 bottle size:720ml




SAKE GRADE:☆☆☆☆½

【215】十六代 九郎右衛門 -くろえもん- 山廃特別純米 雄町 無濾過生原酒 仕込58号 27BY <長野>

株式会社 湯川酒造店:http://www.sake-kisoji.com


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kuroemon_yamahai_omachi60nama27by4.jpg 立ち香──やや甘やかな乳酸フレイヴァー。酸の立ち上がりは丸く柔らかいニュアンス。このへんは非常にわかりやすい素直な山廃タッチ。少しだけ変化球に備えていたオレとしては、やや拍子抜けというか、攻め気を失う。

 奥からは少しビターなザラつきも。断じてチョコまでは育ってない。わずかにナッティーなタッチもあるけど、あからさまに香ばしいというよりは、オイリーな要素としてのナッツ感。長野吟醸と言うと、これまで割りとしっかり香るものに多く出会って来たけど、それらに比べると、この酒の立ち香は、極めて穏やかで品の良いレベルだと言える──ま、蔵元も特別純米に振り分けしてるしな。

 旨いじゃん──。

 ややパウダリーなテクスチャー。果実のサイズは小さめだが、味の濃いフルーツのような凝縮感がある。オレの言う「カロリーオフなタッチ」は少なく、わりに味はしっかり出てる。ただ、旨みや甘みが口の中でペタンコにプレスされる感じ──花巴の南遷なんかで感じたニュアンス──という意味では、しっかりと山廃を思わせる流れだ。なんとなく勝手なイメージで「キレイで透明な酒質」をイメージしてたんだけど、それは違った。むしろチャーミングで愛嬌のある酒じゃないか。EXフィールド全開 (えきすふぃーるどぜんかい) な山廃ではなく、旨み圧縮タイプの山廃。もうね、「燗で」──じゃなく「噛んで」美味しいお酒 (笑) 。


「甘い・酸っぱい」で言うと、どっちだろう──実はオレの意識はもはやそこにはなくて、この旨みのプレス感、ここが快感ポイント。それこそ、飴のジャンルで言うと「ハイチュウ」みたいなストラクチャー。そこらの日本酒女子のように味や香りの表面だけを追いかけても楽しくはなくて、旨みの潰され方──ここをどう感じるがポイントです。

 ああでも、飲み進めていくと、やっぱカロリーオフなニュアンスあるよ。速醸より味わいの情報量が少ないんだ。それはつまり、「雑味」を感じにくいということもであるけど。


 ▼酒の味を弦楽器に喩えるあおい輝彦──とりあえず吉田類は超えた。
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 チロリ経由で──。

 一つ言っておくと、これは香り豊かなフルーティー酒ではない──少なくともオレにとっては。でも、方向性としては、イマドキのフルーティー酒と同様、その洗練さ、お洒落さ、現代性というフィールドで扱われるべき酒ではある。言うなら、同じ土俵にいながら全く違う方角に視線を向けている酒同士かもしれない。

 食中は旨みがさらにペタンコになって──これがまた気持ちイイんだ──、ギュっとした力強い酸で味を引っ張る酒だけど、箸を置いて、ふと一息、酒だけを飲むと、旨みの色彩が再びテイスティングの表舞台に帰ってくる。温度はどうだろ。当然、冷たい方が華奢でスカっとしたプロポーション。スパっとした潔い口どけのプロセスの中で、力強い酸の後に流れ出る、サラサラとした米由来の優しい甘みに舌が和む。

 ま、問題なく旨いか──。

 オレのホロ酔いグラフの上昇と共に、酒がどんどん透明な存在に変わっていく。酒だけを呑んでた最初の頃より、今はキレイで透明な美酒風情を楽しんでるよ。ブログ向けに──少しハイテンションかつ大仰にこの酒を褒め称えるなら、 これは「ポスト・フルーティー酒」の最右翼だろうね。飲みやすさ、キャッチーさの象徴としての「フルーティネス」──これはもはや、否定のしようもなく、モダンな日本酒における代表的な属性の一つではあるだろう。じゃあ、その他に──その先に、なにか別のキャッチー要素があるかと問われたなら、もしかしたらこういう酒こそ、フルーティーの先にある新しい何かのような気もする──もちろん、所詮これは酔っぱらいの褒め上戸に過ぎないかもしれないけれど。

 つまり、あれだ。これ呑んで「フルーティー」だの「華やか」だの言ってるヤツは全員「バカ舌」ということ。

 とはいえ、開栓から時間が経つと、ブドウ様の酸、優しくフローラルなセメダイン香も少しだけ顔を出す。それでもこれは香りを楽しむ酒ではない。直線的な時間軸の中で、頭の甘旨がどういう経緯を辿って山廃的な酸に押し潰されるか、その潰された──プレスされた旨みの中から、時間差でどんな味要素が溢れてくるのか──感じるべきはここにあると思う。


kuroemon_yamahai_omachi60nama27by6.jpg ちょっと最後が辛かったりもするので、大きめのグラスでロックにしても面白いかもしれない。えっ? やれって? もうそれなりに飲んでるんだけどなあ・・・。じゃあ、最後に一杯だけ──オレを酔わせてどうする、キミたち。

 いいわ、これはこれで

 当然、氷によって温度が下がるから、旨みのプレス感より、表面的な美酒風情に惑わされる流れだけど、悪くはない。やっぱ軽いなー。サラサラとパウダリー、それでいてポスト・フルーティーな、新機軸にオサレな味わい。オレ的にはもう少しパキっとした甘酸のコントラストがあると☆5なんだけど、この酒についての文句は特にない。その意味で、減点法ではなく、加点法の行き着く先としての☆4.5。

 フワっとした柔らかい甘さに和のテイストを感じる瞬間もあるんだけど、全体としては洋風でハイカラな酒。味や香りについて多くを語るのは野暮だろう。わかってよ──このプレスされた旨みの質感をさ




── 2日目。



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 もうグラス一杯しかないので、昨日の補足などを絡めて。

 やっぱ山廃生に対するオレ的な楽しみ方は「旨みの潰れ方」に味覚を寄せることにあると、現時点での一つの見解として示しておく。乳酸っぽいとか、ヨーグルトっぽいとか、ま、それは誰にでもわかる属性なので──言ってしまえば、オレンジ・ジュースを飲んで「みかんの味がする」と言うことに等しい面もあるだろう。

 うん、なんと言えばいいのだろう。そうね──たとえば、ゴムボールがあるとするじゃん。野球のボールくらいの大きさのゴムボール。それを潰す──あるいは延ばす──ビヨ〜ンと。通常状態の丸い形が旨みのサイズなら、山廃の飲み口は、それが潰れてビヨ〜ンと旨みが平面的に広がる感じ。旨みのプロポーションにおける3Dから2Dへの変形──球体を潰してになるみたいな。で、円周の縁がクッキリするイメージに重ねて、それが力強い山廃/生酛的な酸になぞらえられるというかさ。

 とにかく、「ドッシリ」とか「クセがある」とか「飲みにくい」とか、そういう認識は、単に軟弱な生酒を飲み過ぎたことによる感性の鈍化かもしれないよ。まるで小さな子供が「ジューちゅ (ジュース) 、ジューちゅ (ジュース) 」言うみたいなさ。でもアナタ、さすがにジュースみたいな日本酒以外は全部「飲みにくい」わけではないだろ? ま、今はジュースみたいな日本酒だけ拾っていても向こう何年かは退屈することはないだろうから、それが好きならそれだけ飲んでりゃ別にいいわけだけど、少なくとも「山廃=どっしり=お燗向き=クセがある」は嘘──つうか曲解だよ。それはたまたま「火入れ熟成山廃」のイメージが一人歩きしただけの話──というのがオレの推理な。

 つうかさ、添加物 (水と米以外の材料) がゼロになる方向の先に生酛や山廃があるのに、そもそも無添加の液体が速醸よりも重くなるわけねえだろ、化学的に考えて。そりゃあ、フレッシュな生酒や直汲みと、1年以上寝かせた火入れの山廃──しかも「ドスコイお燗ライクな銘柄の山廃」とを比べりゃ、ジュースみたいな生酒の方が飲みやすくて軽いのは当たり前の話。

 どうしても比べたいなら、アナタが生酒や直汲みで好きな銘柄の、同じ酒米、同じ精米歩合の山廃生と比べなきゃ。それにね、「どっしりか否か」は「山廃」うんぬんじゃなくて、単に銘柄による属性だと思うよ。花陽浴とか幻舞なんか、速醸&生でもクドくて重いじゃん。 じゃあ、それって速醸だからですか? 生だからですか? 違うじゃん。その銘柄だからじゃん。山廃もそれと同じ。たまたま10年くらい前までは、お燗対応の火入れの熟成酒を得意とする銘柄でしか山廃が飲めなかったから、単なる銘柄属性を山廃属性にすり替えて風説が流布しただけ。ま、悪いのはバカ舌だらけの酒屋なんだけど。

 ま、あれだわ。飲めばわかることだよ。まずは好きな銘柄で山廃生が出てるなら、速醸と似たようなスペックで飲み比べてみ? 同じ銘柄同士なら、速醸より山廃の方が軽くてクリアなケース、多いと思うよ。


moukan1972♂





 ▶︎清書中のBGMはドスコイFUNK。
 


日本酒 雄町 九郎右衛門 山廃 生酛

Comment

Name - moukan1972♂  

Title - 

そういや、「山形正宗 まろら」もマロマティック発酵を利用したお酒でしたね。まだ飲んだことないんですが、近いうちに飲みたいです。

https://saketen.co.jp/shop/item.php?id=I00000257


まあ、結局「重いか」どうかは銘柄によるとは思うんですよね。火入れの熟成山廃を冷酒や常温で飲めば、そりゃ酸に重さも感じますよ。「群馬泉」は「火入れの山廃熟成」にこだわった銘柄なんですが、冬場のお燗は最高ですよ。重いとか全くないですね。独特の複雑味がありますが、これも「山廃」だからではなく「群馬泉」だからだと思うんです。

◤群馬泉 - ほしとたきびCUP 山廃本醸造
http://moukan1972.blog.fc2.com/blog-entry-79.html



「田酒」の山廃純米を1年ほど自前で寝かせて1月に飲みましたが、「群馬泉」の超特撰純米のような風雑な味わいにはなりませんでしたから。

◤田酒 - 特別純米 山廃仕込
http://moukan1972.blog.fc2.com/blog-entry-43.html


さらに踏み込むと、この「」という漢字、諸悪の根源はコイツですかね (笑) ?
2016.10.21 Fri 11:14
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Name - Guest  

Title - 

なるほど、この説明納得出来ますね。ブルゴーニュの高級白ワイン(シャブリは除く)多くの場合リンゴ酸をマロマティック発酵させて乳酸にしますが、ワイン自体は火入れされてないですが、長期熟成させてもヒネ香はしません。偶に事故で熱に晒されると老酒の様になります。従来の山廃の2回火入れ酒ってこの状態にかなり近いのかもしれませんね?
2016.10.20 Thu 13:37
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Name - moukan1972♂  

Title - To サンジュリアンさん

こんちわー。

あれから僕も少し考えたんですけど、「山廃=どっしり=お燗向き」というのは、たまたま山廃で醸された酒が、ちょっと前まで、しっかり火入れした純米酒を蔵で寝かせてから出荷するような銘柄に偏っていたことに起因すると思うんですよね。

でもそれって、別に「山廃だから」ではなく、本質的には「その銘柄だから」「その蔵元だから」と説明されるべきなんですよ。銘柄的な属性、火入れ熟成という酒の状態における属性、これを「山廃的」と曲がって理解したことが大きな誤解を生む原因になったと思います。別にこれらの銘柄であれば、速醸でも普通に「どっしり=お燗向き」ですからね (笑) 。

でも、この10年くらいは、若手杜氏や、モダンな酒を造る蔵でも山廃や生酛を取り入れるようになって、もはやそれらを、ベテラン銘柄の「火入れ熟成山廃」と比べることは少し話が違いますね。こうした曲解の原因の一端が、生酒や直汲みや生詰コンディションのフレッシュ&フルーティー酒が若い日本酒ファンの間で王道になりすぎた結果でもあるところは、非常に皮肉な話です。

とはいえ、同じ銘柄、同じようなスペックであれば、それでも僕は山廃の方が軽いと思いますけどね。菊鷹の純吟スペックの山廃生は加水してALC.15度なので、ワイン代わりにスイスイ呑めますよ。速醸よりも全然軽いです。これは間違いないです。


【153】菊鷹 - 山廃 純米吟醸 雄飛 静岡系酵母 無濾過生 26BY <愛知>
http://moukan1972.blog.fc2.com/blog-entry-326.html

2016.10.20 Thu 11:58
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Name - Guest  

Title - 

今年日本酒に目覚めてから、山廃や生酛の酒って、新政、仙禽と初孫しか飲んでませんね、モーカンさんの説明通り、モノの本を読めば山廃、生酛はどっしりして旨味、酸味ありお燗向き と書かれてます。
ワイン代わりに冷酒でスッキリ飲みたいので、無意識に山廃は避けていました。確かに今流行の甘めでフルーティでスッキリの純米吟醸の大半が速醸で二桁酵母使用が多いらしいですね。
十四代のセット販売の中に菊姫 鶴乃里の一升瓶が入ってのですが、これガチな山廃純米らしいので、本に書いてあるタイプかと思い飲むのパスしてます。
一方数少ない経験では、初孫の生酛生酒 出羽の里60 1升瓶 飲み始めより2-3週間後の方が綺麗な味でスッキリして美味かったです。最初3.5 3週間後4+ でした。
いよいよ新酒ヌーボーの季節ですね〜鳳凰美田の28BYの初しぼり生酒 早速注文しました。美田は甘過ぎず濃すぎずフルーティでスイスイ飲めるので家族には大好評なのです。今迄 生々飲んだことがないので期待大です。
2016.10.20 Thu 09:54
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