ტ 旨い日本酒の買い方 〜初心者から初心者への指南〜 





旨い日本酒の買い方



ტ 旨い日本酒の買い方 (2015年版)  ☆📷酒の写真は該当記事にダイレクトLINK!

▪︎この記事は2015年のfacebook上で書かれたコラムを再編集したものです。


Moukan's tag:




 マイクロフォー、チェッ、ワンツーワンツー、本日は晴天なり本日は晴天なり、マイクロフォー、チェッ、ワンツーワンツー、本日は晴天なり本日は晴天なり、ちょっと中低域もぐってるかな、少し削ってくれる? マイクロフォー、チェッ、ワンツーワンツー、本日はクリスマスなり本日はクリスマスなり、マイクロフォー、チェッ、ワンツーワンツー、オッケー。あとちょっと照明まぶしいからスポット弱めに。

 ああー、えーとッ。どちらさんも笑って許して。多少の毒舌、キツイ冗談、座布団多めのアクロバティックな修辞の連射砲は御愛嬌で大吟醸。

hanabishi_miyamanishiki_nakadori.jpg 突然だけどメリークリスマス。この指南がオレからのクリスマス・プレゼントだって? まさ燗。最後まで読み切るのに脳細胞スパーキングで疲労するという意味じゃ、これは明らかに試練であり、罰ゲーム。なので、最近スカーリ老眼気味の紳士淑女たちがスマホ片手にミクロ文字をチロチロ読むにはあまりにも眼に毒なので、眼球の筋肉活動に自信のない方は、出口はあちらになっております。そこ真っ直ぐ行って左ね。違う違う、そこを左。そこ! そこに一升瓶の自動販売機あるでしょ? その先を左。OK? あ、それとお帰りの際には参加賞のお土産──不思議な文章体験──をお忘れなく。

 はい、居残り組の物好きな皆様、ここからが本題になります。

旨い日本酒、飲んでますか?」──(「セコム、してますか?」の発音と声色で。)

 たとえばDisco Music、その全盛期はいつですか? たとえばファッション、その全盛期はいつですか? たとえばアイドル歌謡、その全盛期はいつですか? たとえばアナタ、その全盛期はいつですか? たとえば旦那 (彼氏) との恋愛感情、その全盛期はいつですか? 答えは十人十色とまではいかずとも、それなりに意見の分かれるところではあります。

 がっ! ががががっ!

たとえば日本酒、その全盛期はいつですか?」──

 というクエスチョンが与えられた場合、そのほとんどの日本酒ファン (下手したら100%) がきっとこう答えるに違いありません。

今でしょぉーッ!!!」──

 そればかりか、さらにきっとこう言葉を重ねるはず。

来年でしょぉーッ!!!」「再来年でしょぉーッ!!!

 そう、日本酒の全盛期はまさに今であり、そして今日よりも明日、明日よりも明後日、まさに留まることを知らぬペースで進化・成熟しつづけているのであります。その背景や理由についての説明は今日のところは泣くナーク割愛シマスがァ、とにかく、昭和40年代生まれの紳士淑女の皆々様方 (※facebook上の友人たちは皆この年代) ! 学生時代の飲み会の飲み放題メニューに含まれていた、あの途方もない二日酔いとシチューのようなゲロを製造していた日本酒と今ここでオレが言及する日本酒とは──

 ウンチとお味噌、いや、そればかりか、もはや鉛筆とレタスくらい違うのであります!

 ワイン (笑) 。シャンパン (笑) 。ビール (笑) 。ハイボール (笑) 。サワー (笑) 。オホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホ

 失礼。

 まあまあ、つか、オレここでなにやってんだ? 床暖房、あったかいなー。うん、うんうん、うんうんうんうん。まあいいや。そろそろ真面目に書くか。

 スワテ (さて) 。



『旨い日本酒の買い方』(2015年版)


shinomine_omachi_jundai1.jpg そもそも日本酒本格参戦一年半のオレにどこまで有益な指南ができるかという心配は置いといて、平均して日に二度のウンコをしながらとか、風呂上りの乾燥気味のケツや太ももに保湿クリームを塗りながら考えたことを、一応はここに書いてイキたいと思う。縦横無尽な論理展開と文章そのものの面白さがついつい大事なことを漂白してしまうというオレ特有の弊害が既に出はじめてはイルガァ、ネット上に蔓延しているそこらの言説よりかは遥かに役に立つはずなので、人並み以上のヤル気、もしくは人並みの気まぐれってやつがある人は、せいぜい完読目指して頑張ってみてね、イエイ。

 最初に幾つかのシンプルな結論を箇条書きで。


旨い日本酒の買い方

《1》信頼できる酒屋 (ネット店舗も含む) を見つける。
《2》自分の味の好みが日本酒リテラシーにおいてどう表現されているかを知る。
《3》<高い=旨い>というわけではないということを知る。
《4》日本酒へのハードルを無闇に上げない。





《1》信頼できる酒屋 (ネット店舗も含む) を見つける。


jikon_nigori1.jpg 細かい裏テクはおいおい書くとして (実際いろいろあるぜよ) 、基本はこの4つ。中でも《1》《2》が一番重要。この2つさえクリアすれば、あとは経験 (飲むという体験) をどんどん積むだけ

 しかし、「信頼できる酒屋を見つける」──これは人によっては決して簡単じゃないこともある。うちの場合、自転車で25分以内に行ける11の特約店 (地酒屋:7,デパート:4) があるので、これらの店に通って旨そうな酒を片っ端から買ってりゃ、もうそれで済むし、実際ほとんどそれで済んでるわけ。電車で30分以内まで範囲を広げればさらに店の数は膨らむし。

 もちろん、店ごとに扱ってる商品に違いはあるし、こっちの店にはコレはあるけどアレがない、あっちの店にはアレはあるけどコレがない、もしくはソレならどっちの店でも扱ってるなど、互いに被ってることもよくある。というより、だいたいは少なからず被ってる。これ、裏を返せばこういうこと。はい、ここ 赤線ね。試験に出るよ。

旨い (人気の) 酒蔵の数は意外に限られる」──


hyakushun_oyamanishiki1.jpg ざっくり言って、日本には現在1500ほどの酒蔵がある。その中には、黄桜や月桂冠や白鶴などのTV CMバンバンの大手や地元消費メインの地域密着蔵も含まれるけど、ここで言う「全国レベルに旨い酒」を作っているような酒蔵は全体としてはかなりの少数派。ま、音楽やレコードに例えりゃ、大手レコード会社所属アーティスト (黄桜や月桂冠や白鶴) と演歌 (地元消費メインの地域密着蔵) とアンダーグラウンドなレーベル (全国レベルに旨い酒) みたいなもん。

 で、そういうアンダーグラウンドな旨い酒を扱ってるのは、レコードで言えば専門性の高い輸入レコード屋みたいな店で、そういう店は厳選された酒 (店主が気に入った酒) だけを扱ってるので、買う前から実は相当なレベルまで蔵の選別がされてるっつうわけ。都内屈指レベルの店だと100種類以上の銘柄を扱ってたりするけど、実際そこまでの店はそう多くはなく、だいたいは20〜30くらいの銘柄の、それぞれのスペックの酒 (純米とか純米吟醸とか米違いとか) を取り揃えてるに過ぎないのさ。

 なので、先ずは家の近所にある地酒を扱ってる店を探して通う。これが基本中の基本になる。家の近所じゃなくても会社の近くとか、日常的な行動範囲の中にある店とか、やはり、買うことそれ自体に必要以上の努力を続けるのは億劫だし大変なんで(オレはレコード集めでさんざ鍛えたから余裕だけど)、先ずは通いやすい位置にある地酒屋を探す、ここからはじめてみて。


denshu_yamahai1.jpg 検索する時は住んでる地域や駅名に「地酒 日本酒 販売」や「地酒 日本酒 特約店」などと入れると引っかかりやすい。実際、「新宿区 地酒 特約店」で検索すると、はい出ました「鈴傳 (すずでん)」。日本酒好きには言わずもがなの有名店だけど、もしもアナタの家の近所だったとしたら、これほどのラッキーはないと言っていいだろう。

 検索しなくても、こういうケースもある。うちら夫婦が東京都/杉並区/西荻に住んでた頃の話。

たまたま家の近所の酒屋が有名な地酒屋だった」←徒歩3分チャリ1分。

 これ、意外にあると思うぞ。うちの奥さんは西荻が実家のくせに、結婚するまでこの酒屋がそういう店だとは知らず、オレが見つけて通い出してから認識したくらい。ま、その頃は主に焼酎しか買ってなかったけど、今じゃ西荻に行く用事がある時は日本酒目当てに必ず覗くほどだ。


haginotsuru_bessen1.jpg さて、 家の近所 (職場の近く) にある、今まで見過ごしてた酒屋が実は地酒を扱うイカした店だったというケースを見極める簡単な方法がある。これ、まず100%通用する判別方法なので、覗いて確認してみてよ。はい、もちろん、ここも赤線ね。超重要な情報ね。

壁一面のデカめ冷蔵庫に何種類もの一升瓶が並んでいる」──。

 ◎ 旨喜酒専門店KOBA
 ◎ 酒屋たなかや

 ざっと見て30〜50種類くらいの (同じ銘柄のスペック違いも含む) 一升瓶が冷蔵庫にビシっと陳列してあれば、はい、これ間違いなく旨い地酒を扱うちゃんとした酒屋です。もしくは、日本酒専用のウォークイン冷蔵室がある店、これも間違いない。さらマイナス5度以下の氷温室があれば最強の部類。

 ◎ マチダヤの冷蔵倉庫 ( FC2ブログ「東京ウエスト2」より )
 ◎ 地酒や 酒井商店の氷温庫


kazenomori_ikaki_kinuhikari1.jpg 中には、高円寺の高原商店や溜池山王の鈴木三河屋のように、ぱっと見、店舗内にデカめ冷蔵庫がない場合もあるけど、そういう店には必ず上記のような冷蔵室があるから、そういう場合はお店の人に訊いてみればいい。

 どうしてこういう法則が100%通用するかと言うと、話は簡単。スーパーや量販店や町の普通の酒屋レベルじゃ、まず要冷蔵のデリケートな酒なんかは扱ってません。たいていは常温保存の効く火入れ殺菌済みの酒か、添加物満載のゲテモノ紙パック酒が主力商品だから、一升瓶を立てて冷蔵保存する必要がないし、そもそも要冷蔵品を出荷するような実力人気蔵の商品を扱ってないわけさ。しかもこういうCランク以下の店は、蛍光灯がガンガンに当たってる状況で日本酒を陳列してることが多い。繊細な地酒を扱う特約店の場合、冷蔵庫内の照明を落としていたり、LEDに交換していたり (我が家ももそう) 、店内も電球照明を使用してるので、そこでも判別は可能。日本酒は光 (紫外線) に弱いので、蛍光灯や日光の当たる場所での管理は基本御法度なのよ。


 さあ、これでなんとか通える範囲に地酒を扱う店を確保できたとしよう。そしたらあとは簡単。普通はせいぜい20〜30種類くらいの銘柄しかないから、とりあえず、旨そうな酒を2〜3本買ってみる。店員にアドバイスを求めるという方法もあるが、店員のレベルもまちまちなので (特に家族経営の店の女連中は全く酒に詳しくないケースが多いので) 、質問するときは具体的な条件を散りばめるのがコツだ


──「少し甘めの、果汁みたいなお酒ありますか?」とか、
──「飲みやすいフルーティーなお酒ありますか?」とか、
──「香りが華やかで飲み応えのある濃いお酒ありますか?」とか、
──「フレッシュでスッキリした生酒でオススメはありますか?」とか、
──「お店で一番人気のあるお酒はどれですか?」とか、

 こんな風に具体的に質問する方が店員も困らない。店員が一番困る訊き方が、

──「 (漠然と) オススメはどれですか?

であるということは頭に入れておいた方がいい。これ、店員からすると、<そもそもオススメできる酒しか置いてないんだけど>という感情を沸き起こすことにもなるので、あまりイイ訊き方とは言えない。だったらこう訊いた方がいい。

──「店員さんが最近飲んだ中で一番旨いと感じた酒はどれですか?


takachiyo_red1.jpg これは人によっては張り切りざるを得ない質問になる (自分の味覚や審美眼が試される) 。あとは超裏技としては、オレみたいな詳しそうな客にいきなり話し掛けるという離れ技もある。そういう客の特徴は20代後半〜40代前半の男 (それ以上の年寄りは今だに辛口酒しか飲まない吉田類シンドロームなので論外) で、店内や冷蔵庫に並んでる酒をくまなく全てチェックしていて、よく見かけるパターンだと、男二人組で来店してる客が多い。そういう常連っぽいこなれた客に、安い勇気を軽く絞り出して、

──「今飲んでおくべき酒はなんですか?

と訊いてみよう。この「今飲んでおくべき」という言葉の持つ無限性を甘く見ない方がいい。ここには言葉以上の意味が含まれているから、質問としては限りなく美しく完璧だ。「今しか飲めない (年一の限定品) 」、「今しか買えない (たまたま今日は店にあるけど人気だから運が良くないと買えない) 」など、これは常連の日本酒マニアにとって張り切りざるを得ない魔法の質問だとも言えよう。もちろん、店員に同じ質問をするのもありだが、逆に客の方が酒に詳しいことは往々にしてある話だから (店員は扱ってる商品の知識を満遍なく持っているが、マニアは好きなモノだけをより深く追求するから一つ一つの情報の質が濃い) 、「今飲んでおくべき酒はなんですか?」──これは彼らに対して凄まじく刺激的なパンチラインとなる。実際もしもオレが店で知らない初心者っぽい人 (特に女性) にこの質問をされたら、傍目にもウザいほどに何かを熱く語りだすことだろう。

「だったらぁー、あ、これ知ってる? あ、知らなーいっ」 ( ←かなりウザい。)



《2》自分の味の好みが日本酒リテラシーにおいてどう表現されているかを知る。


 ここまで読むと《2》の重要性と意味合いがよりわかるんじゃないかな。だから正直に言うぞ。

まずは飛び込め!」──

 これは真実だが、どんな達人だろうとマニアだろうと、<first day>は必ず存在する。わかりやすい言い方をすれば、あのイチローだって、「生まれてはじめてボールを握った日」があるし、僭越ながらオレにだって、「生まれてはじめてレコードを買った日」がある (←あ、オレ、人より少しだけ音楽に詳しいんだー) 。だから、どんなケースでも、ゼロの支配区から飛び出し、自分なりのビックバンを引き起こすこと、これナシにはなにも始まらないわけさ。

 うちらの場合、2014年の夏、近所の酒屋で、とりあえず地酒のカップ酒を15種類ほど買ってみた──どうしてそういう経緯になったのかはここでは語らない。で、その中で特に気に入った銘柄 () の他の商品を少しずつ飲んでいった。それをネットで検索して、その味がどんな言葉で表現されているのかを少しずつ知っていった。

──「ほほう、この果実感がジュワっと広がる感じをジューシーと表現すのかあ
──「ほほう、この厚みのある甘い飲み口を甘旨と表現するのかあ
──「ほほう、このシュワシュワした飲み口をフレッシュと表現するのかあ


juyondai_gokujoumorohaku3.jpg そうして、自分たちが旨いと感じた酒がどういう言葉で表現されているのかを日本酒リテラシーとして蓄えていって、今度はそれと同じ言葉で表現されている他の蔵の酒を飲んでみる。それが気に入ったら、次にその蔵の他の米の酒を飲んでみる。そんなことを繰り返しているうちに、気づいたら、もう家ではほぼ日本酒しか飲まなくなっていましたとさ。だからこそもう一度言おう。

まずは飛び込め!」──と。

 残念ながら、初動に関するお手軽なノウハウは存在しない。無駄も出る。余計な買い物もする。時には失敗もする。でもそれ、特に女性なら心当たりあるんじゃない? 今の化粧水と乳液とファンデに落ち着くまで、一体どれだけの商品を試したのさ。で、気に入ったものが見つかっても、新商品が出るたびに、また買ってしまう (試供品をもらう) 。酒もそれと同じだな。どこまで行っても終わりはない。だけど、その間に旨い酒に出会えるから、そんなに苦でもない。ちょっと自分に合わないなあ、という酒をつかまされても、それも込みで楽しめる。むしろ、それがあるからこそ、本当に旨い酒に出会ったときのアガりっぷりも尋常でないわけでさ。

 とはイエイ

《1》信頼できる酒屋 (ネット店舗も含む) を見つける。

 これさえクリアすれば、まあ、そう大きくハズすことはなくなるけどな。スーパー、コンビニ、量販店に旨い酒がないとは言えないが、信頼できる酒屋に飲むべき酒がたくさんありすぎて、もはや他で買う理由が一切なくなるから、自然とスーパー、コンビニ、量販店で日本酒を買うという発想そのものが消滅するはず。なので、今これを読んでる人は、最初からスーパー、コンビニ、量販店で日本酒を買うという選択肢は捨てていいと思う。いや、最初から持つな。



《3》<高い=旨い>というわけではないということを知る。


 日本酒の値段を決めるのは主に使用する米に関する原価で、よりたくさんの米が必要な造りになると高くなり、より少ない米で済むような造りなら安くなる。要は原材料の経費が商品の値段に影響するということ。もちろん、ここでは紙パック酒や糖類が添加された偽物の酒どもは最初から除外して話を進めるが、ここで言う「高い・安い」は、「信頼できる酒屋に置いてある同一銘柄の中でのスペック違いによる高い・安い」という意味なので誤解のないよう。

 細かい説明はここでは省略するけど、ワインと違い、日本酒の場合、高くなればなるほど、味に雑味がなくなり、香りもエレガントになり、キレイな酒質になる。ワインは値段が高くなればなるほどクセがあって芳醇で濃厚な味わいになる場合が多いけど、日本酒はむしろ真逆。一般論として、高い日本酒は雑味のないキレイな味わいになる。なので、こういうことが起きやすくなる側面を理解してくれ。

この酒、高いけど味薄いなあ」──

 ワインは高いと味が濃くなり、日本酒は高いと味がキレイになる (薄く感じる場合がある) 。もちろん、そういう酒も旨いことは旨いが、逆に言うと、高い日本酒で旨味の厚い濃醇な味を体験することは物理的に難しい場合が多い。だから、同じ酒蔵の720mlで3000円の酒と1500円の酒があった場合、1500円の方が芳醇で味が濃いということはよくあるし、むしろそれが常識なわけだ──高級料亭の懐石料理よりも町の定食屋の生姜焼きの方が食った気になる、あれと同じことだ。


chouyoufukumusume_jikagumi_yamada60_1.jpg そして値段の松竹梅がある場合、ついつい上位の商品に手を出してしまいがちなのが日本人ではあるが、日本酒に関してはそこまで高級路線に走らずとも十分に旨い酒に出会えるので、ひとまずは四合瓶 (720ml) で1300〜1800円 (税抜) 、一升瓶 (1800ml) で2500〜3800円くらいの酒を中心に買い漁ることを薦めたい。しかし1300〜1800円だからと言って侮ることなかれ、ワインで言うところのハウスワイン的プライスであっても、日本酒の場合、充分にハイスペックな美酒が買える。つか、紙パック酒なんか2000mlで1000円しないんだぜ? それに比べりゃ、720mlで1300〜1800円は充分に高級だろ?

 敢えて実際的な手ほどきをここで乱暴にマニュアル化するならば、

信頼できる酒屋で<純米吟醸=精米歩合60%以下>表記の無濾過生原酒を買え!」──

 これはかなりの汎用性を持つ方程式なので、いろいろと例外はあるが、これから日本酒を飲んでみようという人には黄金の方程式と言って差し支えないと思う。まずは近所で地酒を扱う酒屋を見つける。その店で銘柄を問わず<純米吟醸 無濾過生原酒>の酒を買ってみる。運良く口に合えば、その銘柄を中心に他のスペックや米違いの酒を試し、次なる一手として、それらと同じ言葉で味を表現されている他の蔵の酒も試してみる。

 いや、我ながら無駄のない近道の旨酒指南だ。どの蔵も基本的に<純米吟醸クラスの酒>は720mlで1300〜1800円くらいなので、ここが中心プライス=主力商品であることからも、このクラスに的を絞って買い漁ることは有益も有益な買い方と断言できる。蔵にとっても稼ぎ頭の酒というわけだ。



《4》日本酒へのハードルを無闇に上げない。


──「日本酒はなにを買っていいか分からない
──「店に行っても種類がたくさんありすぎて何が美味しいのか見当もつかない


senkin_yamada_nama1.jpg よく聞く言説だ。じゃあ、ワイン派のあなたに質問する。週末、仕事からの帰り道に立ち寄ったワイン売り場でワインを買うとき、あなたは他人に力説できるほど、ワインに関する豊富な知識を持ち合わせているのだろうか? 否、大概は店のコメントを一通り読み、赤か白か、甘いか辛いか、薄いか濃いか、値段が予算内か、産地がどこか、ただそれだけをなんとなく吟味して買っているに過ぎないのではないだろうか。「日本酒はなにを買っていいか分からない」と言う人のほとんどが、実はワインについて人に語れるほどの知識を持たずにワインを買っているということは非常によくある話だ

 ならば、なぜ日本酒に限ってだけ、そこまで正しい知識を求めようとするのだ。ワインと同じように、気軽になんとなく、その日の気分でその日に飲む酒を選べば良いではないか。ワインについては特別のコンプレックスを感じず、なぜか日本酒についてだけ必要以上にハードルを上げる、これはあまりに不自然な振る舞いとは言えないだろうか。

 店選びさえ間違えなければ、日本酒ほど手頃な値段で気軽に旨いものを買える酒はない。店のコメントを読んでなんとなく買ったフランス産の辛口の1780円の白ワイン。うん、不味くはない。ハイそこ、「不味くはない」で済ましていいの? 地酒をキチンと扱う酒屋で買った1500円の純米吟醸無濾過生原酒、死ぬほど旨いんすけど! 再度言おう!

《4》日本酒へのハードルを無闇に上げない。

 予算を決めて適当買いしたケースに限って言えば、大当たりする確率は日本酒の方が遥かに高い。これは真実。オレたちだって、今までさんざワインも飲んださ。好きな銘柄だって実際あったさ。でも、同じ値段で買える日本酒で得られた感動をワインに求めるのは酷! これは統計上も明らかな事実なのであります。

 数年前のデータなので、今はもっとイイ数字になってるが、ざっくり言うと、世に売られている全日本酒のうち、紙パック酒などに代表される安酒の割合は約80%、残り20%のうちの約半分が純米酒、その10% (20%の半分) の中の更に半分未満が純米吟醸などのハイスペック酒、そしてその5%未満 (10%の半分未満) のうちの極僅かな純米吟醸クラスの酒が人気銘柄。つまり、人気銘柄の純米吟醸以上の酒は、日本酒全体のヒエラルキーで見ると余裕で1%を切る最上級エリート酒ということになる。この屈指のハイスペック酒が、店選びさえ間違えなければ1500円ほどで買えるわけさ。これ、ワインで通用しますか? 全ワインのヒエラルキーにおいて上位1%を切るハイスペック酒が、1500円で買えますか?


kazenomori_yamada60_1.jpg 勘違いしてほしくはないけど、別にワインを貶める気持ちはない。ただ、日本酒ならば、ハウスワイン並の値段で最上級のモノが気軽に買える、これを言いたいわけです。これは酒屋自身もよく口にする論理だけど、

──「ワインなら3000円〜5000円クラスの酒が日本酒なら1500円〜2000円で買える

 残念ながらこれは疑いようのない真実なのであります。じゃあ、なぜワインがそこまで高いのか。ここではそれには深く言及はしないけど、簡単に言えば<需要の問題>ね。世界レベルで見渡した場合、そりゃあ、ワインの方がメジャーだし人気もあるわな。つまり、需要が多い。なので、個々の人気銘柄の希少性も高まり、値段も上がるっつうわけ。それに比べて日本酒はまだまだドメスティックな酒だし、国内の全ての酒消費における日本酒の占める割合は僅かに5%ほど。その5%のうちの20%がちゃんとした日本酒。そう考えると、人気蔵の純米吟醸がいかに少数派かがわかるはず。

 ビール・焼酎を含む全ての酒消費>内、5%が日本酒>内、20%がまともな日本酒>内、50%が純米酒>内、50%未満が純米吟醸以上>内、極僅かが人気銘柄(←オレが言う旨酒はこのクラスね)。つまり、国内の全酒の5%の20%の50%の50%の中の極一部、それが本当に旨い日本酒なのさ。

 姉さん、大変です! そんな超エリート酒が店選びさえ間違わなければ1500円で買えるのです! そして事実、それらは死ぬほど旨い! マジかよ。

 ここでもう一度、復習も兼ねてシンプルな結論を箇条書きで。


旨い日本酒の買い方

《1》信頼できる酒屋 (ネット店舗も含む) を見つける。
《2》自分の味の好みが日本酒リテラシーにおいてどう表現されているかを知る。
《3》<高い=旨い>というわけではないということを知る。
《4》日本酒へのハードルを無闇に上げない。



 ここからは実践的な知識を補填していこうか。すでに一人消え、二人消え、おそらく今これを読んでるのはきっとアナタだけ。真実はいつだって、ほんの一握りのラッキーマンだけに独占される。だが、それでいい。広大なWEB宇宙の日陰に、知られざる真実の徒花がひっそりと咲く様も、それはそれでデジタルに風流じゃないか。

 さて、残念ながら、都内デパートの酒売り場の品揃えは、町の有力地酒屋には遠く及ばないが、地酒屋で扱っているような本格派の酒も、それなりには扱っている。オレの限られた知識を少し披露すると、

◎ 新宿伊勢丹・・・貴、陸奥八仙、南部美人、奈良萬、醸し人九平次、石鎚、獺祭など。
◎ 池袋西武・・・三千櫻、花巴、鏡山、羽根屋、残草蓬莱、幻舞、雪の茅舎、獺祭など。

 このあたりの酒は有力地酒屋においても極めてハイクラスな人気銘柄と言える。中でも池袋西武の酒売り場は都内デパートの中でも頭一つ抜けてると思うし、事実、我が家でも三千櫻の酒はわざわざここで買っているくらいだ。3月に出る「三千櫻 純米 愛山 さくらにごり」はまさに大人のカルピスと言わんばかりの激旨ジュース酒だし、「幻舞 純米吟醸 生原酒 美山錦」も驚くほど濃密に甘旨い超人気商品。年明けに出る「八仙 純米吟醸 直汲み 生原酒」も文句ナシの旨さだ。

 最後にとっておきの実践的な知識を披露してこの講を閉じたいと思う。冒頭で少し触れた<細かい裏テク>がこれに相当するわけだが、ズバリ言おう。まずはマトモな地酒屋を見つけたら、銘柄や細かいスペックは度外視して、<米で選ぶ>という中級者向けの技を盲目的に試してみる。その米とは、ハイ、ここも 超赤線ね。

◎ 愛山 (あいやま)・・・幻の酒米として高価かつ稀少で、使用する蔵は限られる。
◎ 酒未来 (さけみらい) ・・・十四代の社長が18年の歳月を経て交配した稀少米で、使用する蔵は限られる。
◎亀の尾 (かめのお)・・・復活米として有名な稀少米。マンガ「夏子の酒」の龍錦のモデル米。


hanamura_jungin_nama4.jpg たとえばデパートにある酒をご覧あれ。まず上記の米を使った酒は滅多にお目にかかれない。愛山や亀の尾なら少しは見かけるが、酒未来ともなると全国でも限られた酒蔵しか使用が許されていないレア米なので、この米を使わせてもらっている以上、不味い酒を造ろうものなら、逆に悪目立ちして恥ずかしい思いをするから造る側も失敗は許されないというわけ。なので、ちょい貧乏性な買い物センスではあるけれど、何を買っていいのか迷うなら、その迷いを逆手にとって、黙ってレアな米の酒を買えと、少し乱暴に言ってみる。事実、これらの米を使った酒には美酒が多いんだから、決して間違った判断方法ではないのさ。愛山はチェリーのような甘酸がキュートだし、酒未来は清楚に美しい甘さ、亀の尾はタイトで品のいい酸味が持ち味だ。

 最後の<細かい裏テク>は泣く子も酔い潰れる「直汲み (じかぐみ)」買いだ。直汲みとは、絞り口から出てきた酒をタンクに移さず、そのまま瓶詰めすることを言う。1本1本手で汲むため非常に手間が掛かり、取れる本数も少ないので、限られた蔵でしかそもそも商品化されないという事情があり、それを逆手に取るわけだ。つまり、商品に「直汲み」を歌う酒蔵は非常に限られ、かつ時代の流行りに敏感な攻め姿勢の強い蔵とも言えるので、そういう酒にハズレは少ないわけだ。事実、デパードなどで見かける田舎臭い箱入りの高級酒ばかりを展開している蔵の直汲みなどは見たことがない。

 さあ、サヨナラの瞬間はもうすぐそこだ。オマケに「買ってはいけないシリーズ」! まあ、ここまでの話をちゃんと理解していれば、そもそも店選びから間違いが起きないわけだから、そういうマトモな店に買ってはいけない酒はないわけで、このシリーズの意味がどこにあるかはオレ自身もよくわかってはいないが、しかし、これだけは言っておく。

──「裏ラベルの原料欄に<糖類 (水飴) >と書いてある酒は死んでも買うな!

 そもそも米は甘い。ゆえに日本酒とは、正しく真面目に造れば、甘くなるのは極々自然の現象。よく辛口言うが、なにをどう造っても米そのものがハバネロのように辛くなることはなく、辛口とは、単に米の甘味よりもアルコールの辛さが相対的に浮き立つ酒について、<辛口>と言っているに過ぎないわけだ。ゆえに日本酒とは、米を原料にする以上、そもそもは甘い。ニモカカワラズだ! なぜに糖類を添加する必要がある!? そういう酒は往々にして偽物だから、もう一生飲まなくていい、ただそれだけを覚えておいてくれ。有限の人生において、肝臓の無駄使いだけは避けたいものだ。

 あと、主にデパートなどで売ってる謎の田舎大吟醸 (720mlで3000円以上) も積極的に買う必要はない。よく瓶の首に<金賞受賞!>とかのラベルが付いていたりするけど、よく考えてミ。本当に人気があって品薄なら、そんな宣伝、する必要なくね? ラベルだって金かかるんだぜ? なので、オレが普段好んで飲んでるような酒蔵の酒瓶の首に、そんなラベルが掛かってあるの、見たことありまシェーン。つか、ダサいっしょ。芸能人の二科展入選自慢じゃないんだから。

 あ、スゲえ大事なこと、言うの忘れてた。いけねえ、いけねえ。

 本当の「旨い日本酒の買い方」──。


 オレが旨いと言った酒を黙ってネット通販しろ。


 以上。


moukan1972♂




日本酒

Comment

Name - moukan1972♂ (もう肝臓の無駄使いはしたくない)  

Title - To 日本酒初心者さん

熱いコメントありがとうございます (笑) 。

しかもIMADAYつながり!
而今、美味しかったんだ〜。いいな〜。
うちのはどうも最後イヤな感じで苦くて・・・。
貴は今の時期、純吟/山田錦/生が出回ってて、これは凄い濃醇な甘旨口。
26BYは旨かったよ。


──九州の田舎の居酒屋なんて保管状況も品ぞろえも酷いもんですし。宅呑みのが自己満足できます。

外呑みは気軽な有料試飲くらいにしか考えてないなー。
一度に何種類飲めるかが勝負みたいな。

家でさんざ抜栓後の味の変化なんかを目の当たりにしてると、
店で飲む場合、その酒がいつ抜栓されて残り何合なのかとか、
そういうコンディションも考慮しないと、なかなか正しい判断もできないしね。

ま、じっくりその酒を堪能するなら家呑みは最強だよね。
冷酒がダメならお燗とか、温度帯もいろいろイジれるし。
ただ、量をさほど呑めないから、種類を制覇するのに時間がかかるけど (笑) 。


──日本酒ブログだからと言っても、こういうのもアリと思います。

この手のブログを熱心にチェックしてるような人にはあまり意味ないけど、そのうちGoogleとかに拾われるようになった時に本当の初心者の役に立てばいいかなーと。


というわけで、今後ともヨロシクでーす。

2016.04.23 Sat 12:00
Edit | Reply |  

Name - 日本酒初心者  

Title - ありがとうと言いたい

日本酒ブログだからと言っても、こういうのもアリと思います。しかも、よくわかります。4項目すべてわかる(笑)項目(1)これ大事ですね~できれば、通えるとこに信用できる酒店があればいいですが、わたしは九州でどうしても通販に頼るしかないことが多いです。偶然にも IMADAY で同じ頒布会を利用しました(もちろん而今ありき)が、追加で頼んだお酒がモウカンさんと同様に明らかに老ねておりました。正直、がっかりです。大好きな銘柄だったもので((^_^;) もう信用できないかなと。ただ、貴の八反は、初の貴でめちゃ好印象。これだけでも、頒布会としては良かったと思えました。これから貴をいろいろ呑むつもり。七本槍は最悪ですね。冷も燗もマズかった。いまだに常温で8合分を放置(笑)一白もまあ許せる範囲ぐらい。而今は結構良かったですよ(数人で呑んでの意見)当たりハズレあるのかも。項目(2)もよくわかります。日本酒歴1年でようやく少し言えることですが、「ほほう~ の3か所よくわかる。自分も周りが引くくらいこの一年買いまくりました。そして、それでも少し語れるくらいです。とにかく、日本酒うまいかも?と思ったら買うしかないでしょ?と思う。九州の田舎の居酒屋なんて保管状況も品ぞろえも酷いもんですし。宅呑みのが自己満足できます。安いし。項目(3)(4)は、その通り(笑)安くてうまいと思えるお酒に出会ったときの感動はチョットした高級酒を呑むよりは印象に残ると思う(ここでの長陽の純米直汲みの写真がうれしいっす)逆に有名蔵だからといっての期待はダメだと一年で悟りました。このお酒美味しかったらうれしいな~くらいで臨むのが基本ですよね。逆に信用できる(自分の好みにあう)ブログを見つけるもありかと((^_^;)こんな回があるのは個人的にはウレシイかぎり。実際、ハマってすぐ冷蔵庫買ってチルド保管してると、九州の酒店すら信用出来なくなります。ホントに信用してる酒店は同県なのに車で一時間とこに数店。なので、モウカンさんや日誌係さん(他のブログの方の名をだしてスミマセン)は正直うらやましいです。おいしい日本酒の紹介もありがたいですが、こういうのもすっごく興味そそられました。下手な長文失礼しました~
2016.04.23 Sat 00:57
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