◤ゆきの美人 - 純米大吟醸 27BY ── dಠಠb「雪乃ちゃんとの約10年ぶりの再会、果たしてどんな美人になっているんだろうか」#Fruity, Wine Oriented 



yukinobijin_jundai1.jpg秋田一小さな蔵で醸される銘柄」というキャッチコピーで語られることの多いゆきの美人。秋田の若手結社NEXT5 (ゆきの美人、新政、一白水成、白瀑山本、春霞) に参加していることでもよくネットメディア等で取り上げられる。いつもよく行く酒屋3軒で扱いがあるくせに、本格的に日本酒を呑むようになってから買うのは初めてだ。

 とはいえ、実は呑むのも買うのも初めてじゃない。ブログを始めるずっと前──というより、日本酒を本格的に呑み始めるずっと前に、スペックや味は全く覚えていないが、たった一度だけ4合瓶を買ったことがある。いつだったか、たぶん10年くらい前の話だ。その頃は焼酎ブームで、我が家でもよく海や富乃宝山やダバダ火振などを近所の酒屋で買っていて、たまの気分転換に日本酒も買ったりしていた。当時は吉田蔵の純米大吟醸 (火入れ) や梵の純米大吟醸50山田錦 (無濾過生原酒) なんかを買っていたのだが、なにかの気まぐれで一度だけゆきの美人を買ったことがあったのだ。


yukinobijin_jundai2.jpg 突然ではあるが、今、千葉の実家近くのアウトレットモールに来ている。GWの帰郷というヤツだ。もちろん夕食用の酒 (ゆきの美人) も持参してる。今日は珍しく記事に割くための余計でラグジャリーな時間があるので、妻が買い物をしている間、少し脱線気味に書く。

 変な話、酒について書くのに酒の話だけをするのは億劫で退屈だったりする。音楽は聴かせりゃ済むし、酒は飲ませりゃ済む、そういう当たり前の向こう側に敢えて行こうとする無謀こそが書く行為の宿命である以上、常にそうした否応のないニヒルが書き手を襲う理不尽についても人生におけるユーモアの暗部として理解しているつもりではあるが、せっかくのGWだし、この澄み渡った束の間バカンスの海と空に朗らかな諦念という名の紙飛行機を投げ込んで、そういう真面目で為になるレビューは、舌より指の運動能力に長けている酒ジャーナリストや、清々しく爽やかにハズレ瓶を楽しく煽れる酒屋の若くて元気なネット担当者に任せておいて、こちとら優雅なバカンス気分を楽しみつつ、ツラツラと気ままな酔狂に身を委ねてみようじゃないか。




【094】ゆきの美人 - 純米大吟醸 27BY <秋田>

秋田醸造 株式会社 (by「マイ日本酒探し」) :http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/


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 bottle size:720ml
yukinobijin_jundai3.jpg とはいえ、現時点で酒について書けない立派な理由が一つだけある──そう、まだ出先の真昼間だから酒 (ゆきの美人) そのものを飲んでいないのだ。元々は少し空いた時間に「前説の下書きでも」と、簡易なテンションで書き始めたに過ぎなかったわけだが、予期せぬ脱線が先ほどから刻々と進んでしまっている。

 もしもここが豪華客船やモナコの高級ホテルのプールサイドだったとしたら、間違いなく主人公である作家の身の回りで意外だが自然な流れの導入部分を経て一連のミステリーが始まってしまいそうなほどに優雅で素敵な午後ではあるが、残念ながら、ここで不可解な事件はなにも起こらないであろう。なぜなら、周囲を注意深く念入りに見渡しても、見るからに怪しい人物はオレ以外に誰もいないのだ。

 ちなみに忘れないうちに書いておくと、この酒は、麹米に山田錦、掛米に秋田酒こまちを使用し、それらを45%まで磨いた純米大吟醸 (火入れ) である。それにしても、およそ10年前に一度だけ買ったことのあるゆきの美人を、時を経て日本酒にハマってしまったこの2年弱の間に、どうして今の今まで買わなかったのだろう──酒屋やネットで何度も横目で眺めていたのに。


yukinobijin_jundai4.jpg それはおそらく、過去にたった一度だけデートして「別に」と思った女が10年もの時を越えて再び目の前に現れた際にハッとしてしまうことへの気まずさゆえかもしれない。

 吉田蔵や梵は何度かリピートしたが、ゆきの美人にそれはなかった。もちろん、その頃のオレの舌に繊細な日本酒の味を理解するだけの素養や下地がなかったと言い訳することは許されていいはずだが、それでもなんか怖かったという気持ちは、自分でも正直過ぎる屈折した感情だと思う。

 果たしてオレはあの時の非礼を詫びて、「すまなかった雪乃! まさかお前がこんなにも美しい女性だったなんて、あの頃のオレには見えてなかったんだ! 頼む、これからもたまには一緒に食事でもしよう!」と懇願するのだろうか。

 そうこうしている内に、妻が買い物から戻ってきた。つづきは夜に。





──というワケDE、夜に実家でアジフライなんかと一緒に呑んでみた


 本当はテイスティング結果を書かずに逃げると一廉のミステリーが完成するんだけど、それはあまりにも文学的意匠に過ぎるので断念しとくよ (笑) 。

 立ち香は、瑞々しくも凝縮感のある酸の中に様々なフルーツが節度あるタッチでミルフィーユ状に折り重なったニュアンス。白桃や白ブドウ系の甘酸が拮抗しているのが全体の輪郭だと思うけど、セメダイン系から派生するバナナやフローラルも奥底でひっそりとある。温度が上がってくると白桃系と若干のミネラリーな皮感が重なって「びわ」も出てくる。少しツンとしたアルコール感もあるが、そこは「日本酒度:+5」が効いてる感じだ。

 含み幕張。

 おう、甘酸っぱい。そして火入れのくせにジュワりとした濃醇さの中に微量のガスも溶存。同じ秋田NEXT5の山本/黒や、最近呑んだ中だと謙信/越淡麗なんかを真っ先に思い出すものの、そこは磨き45%、酸から渋への収束がスムースだ。

 ほうほうほう、思い出したぞ、この感じ──なワケあるか (笑)


yukinobijin_jundai5.jpg まあまあまあ、約10年前に呑んだ雪乃ちゃんがどんな味だったかはまるで思い出せないし、そもそも今の造りと同じレベルかどうかも分からんから一概には言えないが、もしも当時からこのタッチの酒だったとしたら、酒を酔うために飲んでいた大馬鹿野郎時代のオレがリピートしていなかったことだけは想像に難くない。

 ある意味でしっかりとした日本酒感もある。これは日輪田なんかにも通じるニュアンスだが、人によってはある程度の慣れや下地は必要な場合があるかもしれない酒だ。今となっては食中酒として一枚上手なこのニュアンスは好きだし重宝するけどな。

 食事と一緒に飲み進めて行くと、やっぱ酸がビシっとスパっと立ってくる。ワインで言うタンニン的な収斂性があり、舌を上顎に貼り付けて口の中をもう一搾りするとジュリっとした酸っぱ味が後味としてまだ残ってるほどだ。これは酒単体で楽しむというより、和洋食を問わず、食卓をワンランク上のエレガンスに導いてくれるタイプの酒だ。

 雪乃ちゃん、また一緒に食事、行こうよ




── 2日目。


 残り1合。

 おう、かなり酸っぱいな。ファーストタッチには果実味のある甘さも広がるけど、全体としてはジュっとした収斂性のある酸が味のラインを引っ張ってる。赤ワインのエンベロープ (時間軸による味曲線) に近い。生酒ヴァージョンも気になるところではあるが、このタイトな収斂性に食中酒としての属性を見い出すなら、火入れのアドヴァンテージもなかなかに高いだろう。

 雪乃ちゃん、今度はLOVEマウンテン (愛山) で食事、しようよ

 

moukan1972♂




💻 参照サイト

【マイ日本酒探し】小さいけど頑張っている蔵 ゆきの美人の秋田醸造 (2011/3/1)


ゆきの美人日本酒

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